複合的戦略による心停止ドナーからの移植臓器有効利用の研究 灌流型臓器保存を中心にした機能再生の試み

移植外科学において臓器組織保存学は移植免疫学とともに欠くことのできない分野である。臓器保存の目的はviability を低下させることなく、長時間保存できることに有る。欧米で増加している心停止ドナーを含むマージナルドナーからの腎臓、肝臓、肺などの移植手術は、臓器提供者不足を補う一つの対策である。このような臓器の温阻血障害に加えた冷保存障害は強い虚血再灌流障害を発生させ結果、高率に移植後無機能、遷延性機能障害が出現するが、さらに臓器保存液UW液以降、優れた保存液が開発されたものの、許容保存限界時間はそれほど伸びてはいない。近年、欧米ではマージナルドナーに対して灌流型臓器保存装置を用いて持続灌流保...

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Published inOrgan Biology Vol. 22; no. 2; pp. 121 - 127
Main Authors 孟, 玲童, 西川, 祐司, 古郡, 茉利子, 田崎, 嘉一, 渡邊, 賢二, 暮地本, 宙己, 絵野沢, 伸, 古川, 博之, 小原, 弘道, 渡部, 剛, 今井, 浩二, 庄中, 達也, 松野, 直徒
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臓器保存生物医学会 10.07.2015
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ISSN1340-5152
2188-0204
DOI10.11378/organbio.22.121

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Summary:移植外科学において臓器組織保存学は移植免疫学とともに欠くことのできない分野である。臓器保存の目的はviability を低下させることなく、長時間保存できることに有る。欧米で増加している心停止ドナーを含むマージナルドナーからの腎臓、肝臓、肺などの移植手術は、臓器提供者不足を補う一つの対策である。このような臓器の温阻血障害に加えた冷保存障害は強い虚血再灌流障害を発生させ結果、高率に移植後無機能、遷延性機能障害が出現するが、さらに臓器保存液UW液以降、優れた保存液が開発されたものの、許容保存限界時間はそれほど伸びてはいない。近年、欧米ではマージナルドナーに対して灌流型臓器保存装置を用いて持続灌流保存を行う腎移植施設は増加し、術後の早期機能発現に関する数多くの報告がある。また腎臓以外にも肝臓、肺などで持続灌流保存方法が臨床に登場しており低温ではなく常温での成功例も報告されている。マージナルドナーの有効活用は、臓器保存の研究は、障害臓器の回復のメカニズムを解明し治療法を探求する上でも将来性のある分野である。
ISSN:1340-5152
2188-0204
DOI:10.11378/organbio.22.121