手根管症候群における電気生理学的検討 第4指導出法の有用性について

【はじめに】 手根管症候群は50歳前後の中年女性および糖尿病性神経障害のsubclinical neuropathyとして好発する代表的な絞扼性神経障害の一つである。本疾患の診断には末梢神経伝導速度検査が一般的に用いられており、その評価基準として正中神経の運動神経終末潜時、手関節部でのInching法などが利用されている。今回われわれは、当院にて従来より実施している第4指導出による知覚神経伝導速度(Sensory nerve conduction ; SCV)検査法から、その有用性について検討したので報告する。 【対象および方法】  当院で末梢神経伝導速度検査を実施した168名(男性41名、女...

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Published in日本農村医学会学術総会抄録集 p. 275
Main Authors 岩本, 洋, 荒幡, 篤, 田中, 和幸, 菅沼, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.275.0

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Summary:【はじめに】 手根管症候群は50歳前後の中年女性および糖尿病性神経障害のsubclinical neuropathyとして好発する代表的な絞扼性神経障害の一つである。本疾患の診断には末梢神経伝導速度検査が一般的に用いられており、その評価基準として正中神経の運動神経終末潜時、手関節部でのInching法などが利用されている。今回われわれは、当院にて従来より実施している第4指導出による知覚神経伝導速度(Sensory nerve conduction ; SCV)検査法から、その有用性について検討したので報告する。 【対象および方法】  当院で末梢神経伝導速度検査を実施した168名(男性41名、女性127名、平均年齢59.0歳)221神経を対象とした。計測は手関節から指間の正中神経SCV(第2・4指導出)、尺骨神経SCV(第5・4指導出)、および各導出時の振幅について行い、神経間ならびに導出部位別のSCV低下率などについて検討した。測定にはNicolet社製Viking IVを用いた。 【結果】 1.同一神経における導出部位別低下率 正中神経では弟4指導出SCVが第2指導出SCVに比し、低下率12.6±5.9%と有意な差を認めたが、尺骨神経では導出部位による差は認めなかった。 2.正中・尺骨神経間におけるSCV低下率  ルーチン検査で用いる正中神経第2指、尺骨神経第5指導出によるSCV低下率に比し、両神経第4指導出では31.3±12.3%と有意に低下し、両群の差は9.6±5.7%であった。 【考察】 SCV検査を実施する場合、正中神経は第2指、尺骨神経は第5指を用いて測定するのが一般的であるが、今回の検討から手根管症候群の診断には第4指導出法の有用性が確認された。病変の局在診断にはInching法などの利用も重要であるが、特に従来の方法で判定に苦慮する症例では、本法を用いることでより簡便に電気生理学的診断が可能になると思われる。
Bibliography:2J07
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.275.0