地域医療における造血器腫瘍の実態とその対策 第4報)B細胞リンパ腫(DLBCL&FL)に対するrituximab使用の臨床的意義と問題点

〈目的〉高齢化が進む地域医療では,悪性リンパ腫(NHL)の発症率は増加傾向にあり,かつ70歳以上の高齢者が急増し(第1報),その対策は深刻である。NHL,特にB 細胞リンパ腫の分子標的療法としてrituximab(R)が導入されて7年が経過するが,日本での長期観察の報告は少ない。今回,高齢者の多い地域医療においても,R の導入によってB 細胞リンパ腫(DLBCL とFL を中心)の予後が改善したか否か,過去のCHOP 療法のみの症例と比較検討した。 〈方法〉過去約6年間に経験したB 細胞リンパ腫31例(DLBCL:23例とFL:8例)を解析の対象とした。その内訳はF:13例,M:18例で平均年...

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Published in日本農村医学会学術総会抄録集 p. 173
Main Authors 藤原, 正博, 小林, 勲, 漆山, 勝, 森山, 美昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2009
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.58.0.173.0

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Summary:〈目的〉高齢化が進む地域医療では,悪性リンパ腫(NHL)の発症率は増加傾向にあり,かつ70歳以上の高齢者が急増し(第1報),その対策は深刻である。NHL,特にB 細胞リンパ腫の分子標的療法としてrituximab(R)が導入されて7年が経過するが,日本での長期観察の報告は少ない。今回,高齢者の多い地域医療においても,R の導入によってB 細胞リンパ腫(DLBCL とFL を中心)の予後が改善したか否か,過去のCHOP 療法のみの症例と比較検討した。 〈方法〉過去約6年間に経験したB 細胞リンパ腫31例(DLBCL:23例とFL:8例)を解析の対象とした。その内訳はF:13例,M:18例で平均年齢:71.9歳(43~87歳)であった。寛解導入はR+CHOP 療法(6クール)を目標とした。予後因子(IPI)のhigh risk 群と再発例の10例には,自己造血幹細胞移植(PBSCT)をBEAM 変法+in vivo purging で実施した。治療別の予後は全てKaplan-Meier 法で求め,過去のCHOP のみの症例33例と比較した。 〈成績〉B 細胞リンパ腫:31例の年齢分布では,70代にピークを認め,65歳以上の高齢者は18例(58%)であった。R+CHOP 群のIPI 別の予後では,DLBCL およびFL共も有意の差はなく,有効で,5年以上の生存も4例に達した。更に,高齢者65歳以上の予後とそれ以下の症例間にも有意の差はなかった。一方,R+CHOP 群と過去のCHOP 群の予後の比較では,FL 例は差がなかったが,DLBCL 例では,R+CHOP群の予後がCHOP のみ群を凌駕(P<0.05)した。しかし,R+CHOP 群で,リンパ球の減少や免疫グロブリン(IgG)の低下を認め,しばしばB 型肝炎の再燃や感染症を併発し,高齢者には免疫グロブリン製剤の補充など注意が必要であった。 〈結論〉高齢化が進む地域医療では,NHL も高齢化しているが,rituximab(R)の導入によってB 細胞リンパ腫(DLBCL およびFL)の予後は,高齢者を含め,明らかに改善されている。しかし,R の使用にはその有害事象にも熟知する必要がある。
Bibliography:23-06
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.58.0.173.0