鼻細網肉腫症例 とくに進行性鼻壊疸(壊疸性鼻炎)との関連性について

鼻,口蓋の壊死性変化を伴なつた鼻細網肉腫3症例を報告した. 症例(1) 45才♂.1971年12月下旬に鼻閉をきたす.1972年2月より発熱(38.0°C),全身倦怠感,皮膚の結節性紅斑が現われた.発症5ヵ月後全身衰弱で死亡した.剖検所見は細網肉腫であり扁挑,声帯,皮膚,肝,腎,脾,肺,膵,甲状腺等,多くの臓器への異型細網細胞の浸潤を認めた.明瞭な腫瘤を形成していたのは腎,皮膚のみであつた. 症例(2) 23才♀.1970年12月より鼻閉あり,鼻腔所見,赤沈値亢進,発熱,異常免疫所見などよりWegener肉芽腫が疑われたが口蓋の組織所見より細網肉腫と診断された.心嚢への転移による肺水腫のため1...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 76; no. 7; pp. 853 - 864
Main Authors 今泉, 昌利, 渡部, 泰夫, 田代, 実, 小塚田, 誉志夫, 内藤, 儁, 里見, 真美子, 佐野, 光仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 01.07.1973
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.76.853

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Summary:鼻,口蓋の壊死性変化を伴なつた鼻細網肉腫3症例を報告した. 症例(1) 45才♂.1971年12月下旬に鼻閉をきたす.1972年2月より発熱(38.0°C),全身倦怠感,皮膚の結節性紅斑が現われた.発症5ヵ月後全身衰弱で死亡した.剖検所見は細網肉腫であり扁挑,声帯,皮膚,肝,腎,脾,肺,膵,甲状腺等,多くの臓器への異型細網細胞の浸潤を認めた.明瞭な腫瘤を形成していたのは腎,皮膚のみであつた. 症例(2) 23才♀.1970年12月より鼻閉あり,鼻腔所見,赤沈値亢進,発熱,異常免疫所見などよりWegener肉芽腫が疑われたが口蓋の組織所見より細網肉腫と診断された.心嚢への転移による肺水腫のため1972年9月に死亡した. 症例(3) 52才♂.数年来め鼻閉あり,1971年1月より左鼻翼の腫脹をきたし,鼻細網肉腫が疑われたが観織所見は壊死性変化と炎症性変化であつた.1972年8月鼻中隔の右側の肉芽様病変の組織検査で細網肉腫と診断さ乳た.全身性の転移はいまだ認めない. 鼻細網肉腫には広義の進行性鼻壊疽の中に含まれる鼻腔,口蓋の壊死性肉芽性変化を伴なう症例がある.組織検査で腫瘍と診断され難い細網肉腫である.これは進行性鼻壊疽と診断され易い.この様な鼻細網肉腫の特徴は次の様に思われる. (1) 鼻膜性細網肉腫の中には組織検査で腫瘍と診断し難い症例がある.この様な症例は壊死性肉芽性変化が表面に現われ腫瘍を形成しない症例で,いわゆる狭義の進行性鼻壊疽と間違われ易い. (2) 発病は炎症症状で始まること炉多い.この様に炎症がつよいとき検査成績も赤沈値の亢進,IgおよびIgGの増加,CRPおよびRAの陽性化,血清補体価の上昇,発熱など,Wegener肉芽腫など非腫瘍性疾患と類似の変化を示す.. (3) 転移は他のリンパ性細網肉腫と違つて少ない.転移する場合も腫瘤を形成するより白血病の際にみられる浸潤に似ている..
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.76.853