一次口蓋の癒合部上皮細胞の運命

本研究室では, 齧歯類を用いて, 鼻隆起と上顎隆起の癒合により形成される一次口蓋の癒合領域の細胞動態について検索してきた. しかしながら, 癒合後の一次口蓋の癒合上皮の運命については明らかにされていない. これに対し, 二次口蓋については, 口蓋突起の癒合部上皮は間葉化することが報告されている. そこで, 一次口蓋の癒合上皮が間葉化するかどうかの検索を行ったので報告する. 材料, 方法:一次口蓋形成時には, 内側鼻隆起(MNP)が外側鼻隆起(LNP)と上顎隆起(MX)に癒合する. そこで, まず, MNP上皮の予定癒合領域を特定するために, 胎齢12日のラット胚を摘出し, MNPの上部, 中部...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 469
Main Authors 佐藤多加夫, 今井元, 青戸一司, 大隅典子, 江藤一洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
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Summary:本研究室では, 齧歯類を用いて, 鼻隆起と上顎隆起の癒合により形成される一次口蓋の癒合領域の細胞動態について検索してきた. しかしながら, 癒合後の一次口蓋の癒合上皮の運命については明らかにされていない. これに対し, 二次口蓋については, 口蓋突起の癒合部上皮は間葉化することが報告されている. そこで, 一次口蓋の癒合上皮が間葉化するかどうかの検索を行ったので報告する. 材料, 方法:一次口蓋形成時には, 内側鼻隆起(MNP)が外側鼻隆起(LNP)と上顎隆起(MX)に癒合する. そこで, まず, MNP上皮の予定癒合領域を特定するために, 胎齢12日のラット胚を摘出し, MNPの上部, 中部, 下部の上皮をDiIを用いて標識した後, 24時間全胚培養を行い, 凍結切片にて螢光顕微鏡下で観察した. さらに, 癒合上皮が間葉化するかどうかを確かめるために, 同様の胚の特定した予定癒合上皮をAdex-lacZを用いて標識した後, 12~32時間の全胚培養行い, パラフィン切片にて観察した. 結果, 考察:DiIを用いた追跡実験の結果, MNPの下部の上皮は, MNP-LNP間とMNP-MX間の癒合領域に100%の胚で分布していたのに対し, 中部では70%, 上部では0%であった. そこで, MNPの下部の上皮をAdex-lacZによって標識し全胚培養を行った結果, MNP-LNP間の癒合部では12~32時間後の全ての胚で標識された癒合部上皮は上皮構造を保持していたのに対し, MNP-MX間の癒合部では, 32時問後の胚で上皮構造を失った標識細胞が間葉内に認められた. これらの結果は, MNP-LNP間の癒合上皮は上皮のまま残り, MNP-MX間の癒合上皮は間葉化することを示唆している.
ISSN:0385-0137