らい菌の正常健常者末梢単球由来樹状細胞の抗原提示能に及ぼす影響
ハンセン病の発症には, らい菌のマクロファージヘの感染が重要な役割を果たす. しかし, 生体内で最も重要な抗原提示細胞である樹状細胞(DC)とらい菌の相互作用については充分解明されていない. そこで, 正常健常者末梢単球より分化誘導したDCのらい菌に対する感受性を検索し, さらに抗原提示能に及ぼす影響を検索した. らい菌はヌードマウスを用い増殖させたTha63株を用いた. 対照としてM. bovisBCGおよびM. aviumを用いた. DCは正常健常人末梢血の供与を受け, プラスティック付着単球にリコンビナント(r)GM-CSFおよびrIL-4を用い分化誘導した. DCの成熟化および活性化は...
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Published in | 日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 70; no. 2; p. 92 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本ハンセン病学会
10.07.2001
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Summary: | ハンセン病の発症には, らい菌のマクロファージヘの感染が重要な役割を果たす. しかし, 生体内で最も重要な抗原提示細胞である樹状細胞(DC)とらい菌の相互作用については充分解明されていない. そこで, 正常健常者末梢単球より分化誘導したDCのらい菌に対する感受性を検索し, さらに抗原提示能に及ぼす影響を検索した. らい菌はヌードマウスを用い増殖させたTha63株を用いた. 対照としてM. bovisBCGおよびM. aviumを用いた. DCは正常健常人末梢血の供与を受け, プラスティック付着単球にリコンビナント(r)GM-CSFおよびrIL-4を用い分化誘導した. DCの成熟化および活性化は, 抗CD40抗体等を用い誘導した. らい菌のDCへの感染は, 抗PGL-1モノクローナル抗体(DZ2C11, ハンセン病研究センター皆川文重博士より供与)を用い, 細胞内抗原染色を施した後FACScaliburにて検索した. らい菌由来の抗原の細胞表面への発現は, 抗PGL-1抗体およびハンセン病患者血清(皆川博士より分与)を用い検索した. らい菌感染DCの抗原提示能は, 同一人のCD4+およびCD8+T細胞の増殖応答を3H-Thymidineを用いて定量化した. DCはin vitroでらい菌に対し感受性を示し, 感染DC細胞内にPGL-1抗原が検出された. 同時に, DC表面にPGL-1抗原および患者プール血清に反応する抗原が検出された. そこで, らい菌感染DCの抗原提示能を検索したところ, 対象として用いたM. bovisBCGおよびM. aviumが, それぞれMOI0. 2および5. 0で強いCD4およびCD8陽性T細胞の増殖応答をDCの活性化因子非存在下で誘導したのに対し, M. lepraeはMOI320で初めて有意のT細胞増殖をもたらした. 感染DCにより刺激されたT細胞が産生するIFN-rを測定したが, 増殖応答と同様に対象群で強く, らい菌ではMO1320を用いた場合に明かな産生を認めた. 感染DC表面の抗原提示に関与する抗原を検索したところ, らい菌感染DCでは菌数に比例してCD40, CD86, MHC抗原の発現が増強し, MO1320でCD83抗原が陽性となった. そこで, らい菌感染DCをCD40mAb, LPS, IL-12, IFN-rなどを単独で用いDCの活性化を試みたが, CD40mAb処理DCでCD83抗原が陽性となったが, T細胞を刺激する能力は増強されなかった. らい菌は生体内で最も有能なDCに対し感受性を示したが, 他の抗酸菌(M. bovisBCGおよびM. avium)と異なり, 自己のT細胞を容易には抗原特異的に刺激し得なかった. さらに, CD40リガンドなどのDC活性化因子にも抵抗性を示した. LL型ハンセン病の発症にも深く関与している可能性が示唆された. |
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ISSN: | 1342-3681 |