手指巧緻動作における加齢の影響
運動機能の巧緻性に関する側面について Purdue Pegboard を用いて, 手指および上肢機能における加齢の影響につき検討し, さらに神経疾患の評価法としての応用を試みた. 正常対象群90例, 22歳から85歳, 平均年齢56.9歳における成績は, 加齢と負の相関を示し, 各検査項目の相関係数は-0.79~-0.86であり推計学的にも有意であった. 男性43例と女性47例に分けて性差を検討すると, 男性においてやや良好であったが有意差は認められなかった. 利き手の判定に応用すると, 正常対象者の約18%に左利きの可能性が認められた. 老年者の日常診療においては, 脳卒中やパーキンソン病な...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 20; no. 5; pp. 405 - 409 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.09.1983
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.20.405 |
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Summary: | 運動機能の巧緻性に関する側面について Purdue Pegboard を用いて, 手指および上肢機能における加齢の影響につき検討し, さらに神経疾患の評価法としての応用を試みた. 正常対象群90例, 22歳から85歳, 平均年齢56.9歳における成績は, 加齢と負の相関を示し, 各検査項目の相関係数は-0.79~-0.86であり推計学的にも有意であった. 男性43例と女性47例に分けて性差を検討すると, 男性においてやや良好であったが有意差は認められなかった. 利き手の判定に応用すると, 正常対象者の約18%に左利きの可能性が認められた. 老年者の日常診療においては, 脳卒中やパーキンソン病などによる身体障害を有するものが増加するが, 日常生活動作と関連の深い巧緻性に関する定量的評価法は乏しいことから, 片麻痺患者32例, パーキンソン病患者9例に本検査法を施行し, その結果につき若干の考察を加えた. 片麻痺患者の非麻痺側における成績は正常者の片手動作による得点より劣る傾向がみられ, とくに左片麻痺患者の右手では有意な低下が認められた. 非麻痺側肢の機能低下と, 左右差の存在が示唆されたことは大脳半球の両側性支配と巧緻性に関する機能分化の可能性を論ずるうえで興味深い. パーキンソン病患者では, 重症度に比較的対応して成績が不良であり, とくに, より巧緻性を要する組立て項目において低下が目立った. 本検査法は特定の器具を必要とするが, 比較的簡便に短時間 (数分) で手指巧緻性に関する定量的成績を得られ, その成績は暦年齢と有意な相関を示す一方, 神経疾患の患者評価への応用に示された如く, 中枢神経機能とのかかわりが大であり, とくに神経系機能の加齢に伴う老化度の指標として有用と考えられた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.20.405 |