動物通過によるPrevotella nigrescens exopolysaccharide産生性の変化

【目的】Exopolysaccharide(EPS)を産生する臨床分離株Prevotella nigrescens strain 22は通常の継代を繰り返すとEPS産生が著しく低下する. EPSはバイオフィルムの主構成要素として注目されており, 安定したEPS高産生供試菌株を得ることはバイオフィルム形成に関する研究を行うために重要である. 我々は臨床分離直後EPS高産生株であったstrain 22を用いてEPS産生性を高レベルに維持するため動物通過法の確立を試みた. 【方法】長期保存または長期継代してEPS産生能の低下したstrain 22を液体培地にて48時間培養後, マウス鼠径部へ0. 5...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 44; no. 5; p. 469
Main Authors 古川智代, 山中武志, 一居真代, 山根一芳, 福島久典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.09.2002
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Summary:【目的】Exopolysaccharide(EPS)を産生する臨床分離株Prevotella nigrescens strain 22は通常の継代を繰り返すとEPS産生が著しく低下する. EPSはバイオフィルムの主構成要素として注目されており, 安定したEPS高産生供試菌株を得ることはバイオフィルム形成に関する研究を行うために重要である. 我々は臨床分離直後EPS高産生株であったstrain 22を用いてEPS産生性を高レベルに維持するため動物通過法の確立を試みた. 【方法】長期保存または長期継代してEPS産生能の低下したstrain 22を液体培地にて48時間培養後, マウス鼠径部へ0. 5ml皮下注射した. 2~4日後滅菌綿棒にて膿瘍部をスワブし血液寒天培地へ塗抹, 2~3日間培養し, コロニー形態, グラム染色性, API ZYMによる酵素産生性を確認後, 通過前後の粘度, SEM像を比較した. また2次元電気泳動にて通過前後のタンパク発現レベルを検討した. なおコントロールにはstrain 22にethidium bromideを作用させ確立したEPS非産生変異株strain328を用いた. 【結果と考察】strain 22を動物通過させると通過前に比べ粘度は有意な上昇を示した. この粘度上昇は7~8回の継代で失われるが, 再度動物通過を行うことにより回復することが明らかとなった. 一方, strain 328では通過前後の粘度は一定であった. このことから動物通過による環境変化により, P. nigrescensのEPS高産生性を誘導, 維持できることが明らかとなった.
ISSN:0385-0137