多発性口腔癌における細胞周期関連因子の発現異常

口腔粘膜の複数の部位に癌が生じる多発性口腔癌における各種細胞周期関連因子の発現状況を検索し, それらの異常が多発癌発生にどのように関与するのかについて検討した. 【材料と方法】同時性あるいは異時性に多発性口腔扁平上皮癌を生じた15例(42検体)のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用い, 細胞周期関連因子(p53, p21, p27, p16, cyclin D1, pRb)の発現状況を免疫組織化学的に検索した. 【結果と考察】p53の過剰発現は12例27検体に認められ, うち6例では全検体が過剰発現を示した. また, 腫瘍周囲の粘膜上皮にもしばしばp53陽性細胞が集籏して観察された. cycl...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 450
Main Authors 小川郁子, 工藤保誠, 趙明, 竹腰利嗣, 宮内睦美, 高田隆, 二階宏昌一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
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Summary:口腔粘膜の複数の部位に癌が生じる多発性口腔癌における各種細胞周期関連因子の発現状況を検索し, それらの異常が多発癌発生にどのように関与するのかについて検討した. 【材料と方法】同時性あるいは異時性に多発性口腔扁平上皮癌を生じた15例(42検体)のホルマリン固定パラフィン包埋切片を用い, 細胞周期関連因子(p53, p21, p27, p16, cyclin D1, pRb)の発現状況を免疫組織化学的に検索した. 【結果と考察】p53の過剰発現は12例27検体に認められ, うち6例では全検体が過剰発現を示した. また, 腫瘍周囲の粘膜上皮にもしばしばp53陽性細胞が集籏して観察された. cyclin D1の過剰発現も13例28検体と高率に認められ, 8例では全検体が過剰発現を示した. p21, p27およびp16の発現低下は, それぞれ11, 31, 20検体に認められ, 1検体を除く全検体でこれらcyclin-dependent kinase(Cdk)inhibitorのうち1つ以上の発現低下を伴っていた. なかでもp27は, すべての症例で発現低下を示す検体があり, 癌化への強い関与が示唆された. しかし, Cdk inhibitorの発現状況は同一症例でも検体により様々で, 後発癌での異常の蓄積もみられなかった. pRbの発現低下は, 6例8検体と低頻度であった. 以上の結果より, 口腔多発癌の発生にはp53, cyclin D1とCdk inhibitorの異常の集積が関わっていることが示唆された. 単発癌との比較を含め, 発表する.
ISSN:0385-0137