左側と右側の上顎側切歯が癒合した形態を示す癒合歯の形態的特徴と組織構造について

【目的】重複上顎側切歯の癒合歯の形態的特徴と組織構造について詳細に検討し, これを形成した歯胚の由来について検討した. 【材料と方法】12歳の日本人女性の上顎左側にみられた2本の側切歯の癒合歯を使用した. 歯の表面形態を実体顕微鏡下で詳細に観察し, 歯髄腔の形態を軟X線撮影装置(SOFRON)で観察した. 水平および近遠心方向の連続研磨標本を作製し, 偏光顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察した. 同一標本の研磨面およびエナメル質表面に平行な再研磨面を0.05NHCIで3分間腐蝕して, 定法により, S-800型走査電顕(日立)で観察した. 【結果】2本の側切歯は, 近遠心方向に並んで, 歯冠の歯頸部と歯...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 42; no. 5; p. 430
Main Authors 高橋正志, Zheng Jinhua, 野中幸治, 小林寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.2000
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:【目的】重複上顎側切歯の癒合歯の形態的特徴と組織構造について詳細に検討し, これを形成した歯胚の由来について検討した. 【材料と方法】12歳の日本人女性の上顎左側にみられた2本の側切歯の癒合歯を使用した. 歯の表面形態を実体顕微鏡下で詳細に観察し, 歯髄腔の形態を軟X線撮影装置(SOFRON)で観察した. 水平および近遠心方向の連続研磨標本を作製し, 偏光顕微鏡と蛍光顕微鏡で観察した. 同一標本の研磨面およびエナメル質表面に平行な再研磨面を0.05NHCIで3分間腐蝕して, 定法により, S-800型走査電顕(日立)で観察した. 【結果】2本の側切歯は, 近遠心方向に並んで, 歯冠の歯頸部と歯根が癒合していた. 近心側切歯が逆(右)側の特徴を示したので, 本癒合歯は左側と右側の上顎側切歯が癒合した形態を示した. 歯冠の唇側面の癒合部では, 薄いエナメル質が象牙質側に陥入していた. 両歯の象牙質にみられた蛍光線は癒合部で連続していた. 【考察】本癒合歯は, 形態および組織構造から, 2個の歯胚が癒合して形成したのではなく, 1個の歯胚が不完全分離して形成したものと考えられる. 近心側切歯が逆側の形態を示すのは, 逆側の歯胚から形成されたためではなく, 遠心側切歯と一部が癒合した状態で形成されたためと推察される. 【結論】重複上顎側切歯の癒合歯では, 近心側切歯の石灰化が逆側から進行したために, 逆側の形態に形成されたことが分かった.
ISSN:0385-0137