マウス中枢神経系におけるサイクリンEの発現と機能

サイクリンEは, サイクリン依存性リン酸化酵素cdk2と結合して細胞周期の進行に働く細胞増殖制御因子である. 神経細胞は一般に生後分化した後, 増殖しないことが知られているが, サイクリンEは成体マウスの脳にも発現していることが報告されている. また, cdk2に類似したリン酸化酵素cdk5は, 神経細胞に発現しており, その制御因子であるp35と結合して神経細胞の移動に関与していると考えられている. われわれは神経細胞におけるサイクリンEの役割を明らかにすることを目的として, 以下の解析を行った. 【方法】マウス大脳皮質よりタンパク質を抽出し, Westemblotting法, 免疫沈降法に...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 494
Main Authors 松永裕子, 池田やよい, 江藤一洋, 高木裕三, 池田正明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
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Summary:サイクリンEは, サイクリン依存性リン酸化酵素cdk2と結合して細胞周期の進行に働く細胞増殖制御因子である. 神経細胞は一般に生後分化した後, 増殖しないことが知られているが, サイクリンEは成体マウスの脳にも発現していることが報告されている. また, cdk2に類似したリン酸化酵素cdk5は, 神経細胞に発現しており, その制御因子であるp35と結合して神経細胞の移動に関与していると考えられている. われわれは神経細胞におけるサイクリンEの役割を明らかにすることを目的として, 以下の解析を行った. 【方法】マウス大脳皮質よりタンパク質を抽出し, Westemblotting法, 免疫沈降法によりサイクリンEの発現とその結合タンパク質を解析した. また, 細胞レベルでのサイクリンEの発現を, 免疫組織化学法, in situハイブリダイゼーション法を用いて解析した. 【結果】サイクリンEの発現は胎仔期の増殖中の神経細胞に加えて, 分化した細胞にも強く発現していた. また, サイクリンEは増殖中はcdk2と, 分化後はcdk5と結合していることが確認された. 【考察】以上の結果は, サイクリンEが分化した神経細胞においても何らかの機能を果たしていることを示唆している. サイクリンEが少なくともcdk5と結合していることが確認されたが, その機能について現在さらに解析中である.
ISSN:0385-0137