スギ花粉症患者の腸内細菌叢変動に対するBifidobacterium longum BB536の抑制効果
「目的」我々は昨年, 花粉症患者の腸内細菌叢, 中でもBacteroides fragilis(以下B. fragilis)グループが花粉の飛散に伴い変動していることを報告した. 2005年の春は健常者との比較を併せBB536摂取による腸内細菌叢への影響を解析し, 花粉症改善効果の作用機序解明を試みた. 「材料方法」スギ花粉症患者44名を対象にBB536またはプラセボ粉末を用いた無作為割り付け二重盲検並行2群比較試験を実施した(1/20~4/20). 同時期に健常者(非花粉症)14名はプラセボ粉末を摂取し, 毎日の自覚症状調査, 毎月の採血採便を行った. 腸内細菌叢の解析にはT-RFLP法及び...
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Published in | 腸内細菌学雑誌 Vol. 20; no. 2; p. 138 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本ビフィズス菌センター
01.04.2006
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Summary: | 「目的」我々は昨年, 花粉症患者の腸内細菌叢, 中でもBacteroides fragilis(以下B. fragilis)グループが花粉の飛散に伴い変動していることを報告した. 2005年の春は健常者との比較を併せBB536摂取による腸内細菌叢への影響を解析し, 花粉症改善効果の作用機序解明を試みた. 「材料方法」スギ花粉症患者44名を対象にBB536またはプラセボ粉末を用いた無作為割り付け二重盲検並行2群比較試験を実施した(1/20~4/20). 同時期に健常者(非花粉症)14名はプラセボ粉末を摂取し, 毎日の自覚症状調査, 毎月の採血採便を行った. 腸内細菌叢の解析にはT-RFLP法及び定量PCR法を用いた. T-RFLP法は2組のプライマーセット(27For529F+1492R)と5種類の制限酵素組合せ(HhaI, MspI, AluI, HaeIII, RsaI+XspI)により腸内細菌叢の全体像を, グループ特異的プライマーとXspI+HaeIIIの組合せによりをB. fragilisグループ解析した. 「結果考察」BB536の継続摂取により, 花粉症症状の改善効果が認められた. T-RFLPデータにづく主成分分析を実施したところ, 花粉の飛散終了時にプラセボ群と健常者群の腸内細菌叢は異なる傾向が観察され, BB536群はどちらにも重なる分布をしていた. プラセボ群に寄与するピークをデータベースであるPAD-HCM及びTAP-T-RFLPにより推定したところ, いくつかの菌種が観察され, 昨年変動が認められたB. fragilisグループも含まれていた. そこで定量PCRを実施したところ, 昨年同様花粉の飛散に伴い花粉症患者の本菌群は増加したが, 健常者では変化が認められず, BB536摂取群では増加が有意に抑制された. 増加が顕著だった花粉飛散終了時の占有率と, 自覚症状及び血中スギ特異的IgEとの間には有意な正の相関が認められ, 本菌群の花粉症への関与が推察された. B. fragilisグループに属する菌種レベルでの解析を行うためにグループ特異的なT-RFLPを実施し主成分分析したところ, 本菌群の菌種構成により被験者の花粉症症状は異なることが示唆された. |
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ISSN: | 1343-0882 |