国立療養所・大島青松園における再発患者の実態調査

目的:国立ハンセン病療養所, 治療研究『ハンセン病の再発を防止できる服薬中止指針の作成』に対する資料提供として, 大島青松園における再発患者の実態調査を行った. 方法:再発防止安全域を考える条件として, 261名の再発時期, 服薬内容をカルテから調査した. 調査期間は1961年(昭和36年)から1999年(平成11年)までの39年間である. 結果:病型はTT及びBTが51名(19.5%), LL及びBLが210名(80.5%)であった. これらのうち, 再発経験者は67名(LL, BL:66, TT, BT:1), 再発回数はDDS投与中(後)に79回, RFP, B663投与後に2回で複数回...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 69; no. 1; p. 45
Main Authors 長尾栄治, 後藤正道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 01.03.2000
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Summary:目的:国立ハンセン病療養所, 治療研究『ハンセン病の再発を防止できる服薬中止指針の作成』に対する資料提供として, 大島青松園における再発患者の実態調査を行った. 方法:再発防止安全域を考える条件として, 261名の再発時期, 服薬内容をカルテから調査した. 調査期間は1961年(昭和36年)から1999年(平成11年)までの39年間である. 結果:病型はTT及びBTが51名(19.5%), LL及びBLが210名(80.5%)であった. これらのうち, 再発経験者は67名(LL, BL:66, TT, BT:1), 再発回数はDDS投与中(後)に79回, RFP, B663投与後に2回で複数回の経験者が11名いた. 再発率はTTでは2.0%(1/51件)であった. LL, BLでは, DDS治療で36.3%(78/213件), RFP治療で2.7%(2/75件)あり, DDS服薬中の再発は64件, DDS中止後の再発は15件であった. 再発件数の推移は1970年から漸減してきていることがわかった. LL, BLにおける菌陰性化後から再発までの期間は, DDS治療者では15年以内が85.3%, 20年以内が87.1%, またRFP治療者では3年目と13年目に再発しており, B663治療者では再発者がいなかった. TTにおいては10年目に再発していた. LL, BLの年間再発率は, DDS治療者において1-5年, 2.0%, 6-10年, 2.8%, 11-15年, 2.0%, 16-20年, 0.6%, 21-25年, 0.5%, 26-30年, 0.2%, 31-35年, 0.4%, 36-40年, 0.0%であった. 現在, skin smear testは全員が菌陰性であるが, LL, BLにおいて, DDS単独治療で終了した者は64.3%(135人), RFP治療で終了した者は35.7%(75人)おり, 菌陰性化後の経過期間をみると, DDS単独者は16年以上が94.2%, 21年以上が85.3%を経過しているが, RFP服用者ではいまだ94.4%が20年以内, そしてB663服用は92.3%が20年以内しか経過していない. 考察:DDS単独治療に比較して, RFPの有効性が推測できる. だが, WHO/MDTのレジメンによる再投与は, 高齢と副作用のために日本国内では実施困難を感じるので, DDS治療におけるLLの安全域を求める必要がある. 今回の集計では, 安全域は菌陰性化後20年とする必要がありそうだ. しかし, RFP投与者の安全域は菌陰性化後の経過期間が短く, 推測できなかった. 再発者は年毎に減少してきているが, 1970年以後のRFP治療の効果が推測される. 結論:日本国内の既往者のためには, DDS単独治療の場合の治療終了レジメンが必要である. 全国からのデータ集積によって, さらに確実な安全域が見えてくるのではないだろうか.
ISSN:1342-3681