アデノウイルスベクターを用いたマウス胎児頭蓋冠における遺伝子発現調節

我々は, マウス胎児頭蓋冠発生における遺伝子の機能を解析するために, アデノウイルスベクターを用いた遺伝子発現調節を試みている. 今回このベクターの有効性を検討するために, cytomegalovirus(CMV)プロモーターの下流にenhanced green fluorescent protein(eGFP)を組み込んだコントロールベクターを用意し, 子宮外胎児手術法を用いてマウス胎児の冠状縫合部皮下に注入してeGFPの発現を観察した. その結果, 皮下の組織の中で, 硬膜のみ, 骨形成層と結合組織, 結合組織のみという3種類の発現パターンが認められた. 硬膜のみの発現は注入時期にかかわら...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 44; no. 5; p. 415
Main Authors 葭田敏之, 井関祥子, 石川烈, 江藤一洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.09.2002
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Summary:我々は, マウス胎児頭蓋冠発生における遺伝子の機能を解析するために, アデノウイルスベクターを用いた遺伝子発現調節を試みている. 今回このベクターの有効性を検討するために, cytomegalovirus(CMV)プロモーターの下流にenhanced green fluorescent protein(eGFP)を組み込んだコントロールベクターを用意し, 子宮外胎児手術法を用いてマウス胎児の冠状縫合部皮下に注入してeGFPの発現を観察した. その結果, 皮下の組織の中で, 硬膜のみ, 骨形成層と結合組織, 結合組織のみという3種類の発現パターンが認められた. 硬膜のみの発現は注入時期にかかわらず観察され, これは骨形成層の下にウイルスが注入された結果であると考えられた. 結合組織と骨形成層での発現は, 胎齢14日(E14)までに注入を行った場合に見られ, E14. 5以降に注入を行った場合には, 発現が結合組織のみに認められた. E14. 5の骨形成層において, 骨芽細胞の分化マーカーの発現レベルはE14と比べて著しく高く, E14とE14. 5では骨形成層における骨芽細胞の分化段階の違いが明らかとなった. 以上の結果から, マウス胎児頭蓋冠におけるベクターの感染とタンパク質発現には骨芽細胞の分化段階が重要な要素であることが示唆された. 今後我々は機能的なタンパク質の発現を制御し, その役割について検討する予定である.
ISSN:0385-0137