健常高齢者における無症候性虚血性脳病変の認知機能と脳萎縮に与える影響 6年間の縦断的検討 (Pilot Study)

6年間の経過を観察できた健常高齢者において, 無症候性脳梗塞病変の有無および脳室周囲高信号域 (PVH) が, 認知機能, MRI上の大脳萎縮に与える影響について検討した. 高齢者脳検診において, 脳梗塞等の脳疾患の既往がなく, MRIの6年間の追跡調査が可能であった65歳以上の高齢者27名を対象に, 知的機能検査 (岡部式簡易知能評価尺度, KohsIQテスト) および Zung の Selfrating Depression Scale (SDS) を用いたうつ状態の評価を行い, MRI画像上での無症候性脳梗塞病変の有無およびPVHの有無により各々2群に分類した. 大脳萎縮の指標としては,...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 37; no. 4; pp. 298 - 303
Main Authors 小林, 祥泰, 小黒, 浩明, 山口, 修平, 岡田, 和悟
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.04.2000
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.37.298

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Summary:6年間の経過を観察できた健常高齢者において, 無症候性脳梗塞病変の有無および脳室周囲高信号域 (PVH) が, 認知機能, MRI上の大脳萎縮に与える影響について検討した. 高齢者脳検診において, 脳梗塞等の脳疾患の既往がなく, MRIの6年間の追跡調査が可能であった65歳以上の高齢者27名を対象に, 知的機能検査 (岡部式簡易知能評価尺度, KohsIQテスト) および Zung の Selfrating Depression Scale (SDS) を用いたうつ状態の評価を行い, MRI画像上での無症候性脳梗塞病変の有無およびPVHの有無により各々2群に分類した. 大脳萎縮の指標としては, MRI画像上で側脳室体部において画像処理ソフトを用いて, 脳室面積指数 (VAI) を算出した. (結果) 病変無し群, PVH無し群においては, 岡部スコアの有意な経年性低下, VAIの有意な経年性増加を認めたが, SDSスコアと KohsIQは不変であった. 一方病変有り群, PVH有り群においては, 岡部スコアの経年性低下の傾向, KohsIQテストの有意な経年性低下, SDSの有意な経年性上昇, VAIの有意な経年性増加を認めた. (結語) 健常高齢者における無症候性脳梗塞および脳室周囲高信号域の存在は, 認知機能, うつ状態, および大脳萎縮の経年変化に影響を与える可能性があり, 中でも動作性認知機能の低下とうつ状態の悪化を促進する可能性が示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.37.298