ヒト口唇の粘膜固有層の線維走行と割線の関係について
【目的】ヒトの口唇, 頬や口蓋の固有層乳頭の配列は発生の名残を残し, 割線が乳頭配列にほぼ沿って生じており, 固有層乳頭の線維が平行に走る場合に割線が生じる可能性もあると考え, 割線と粘膜固有層の線維走行との間の関係について観察した. 【材料と方法】解剖実習に供された御遺体5体(男性3人, 女性2人85から64才)から口唇を摘出し, 水酸化ナトリウム水侵軟法とタンニン-オスミュウム導電染色を施し, 一部の標本は乳頭配列に平行と直角に切断した. 次に, ブチルアルコールで凍結乾燥して金蒸着し, 走査型電子顕微鏡で粘膜固有層の表面とその断面を観察した. 【結果と考察】皮膚部では乳頭の配列が弱く,...
Saved in:
Published in | 歯科基礎医学会雑誌 Vol. 44; no. 5; p. 480 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
歯科基礎医学会
20.09.2002
|
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 【目的】ヒトの口唇, 頬や口蓋の固有層乳頭の配列は発生の名残を残し, 割線が乳頭配列にほぼ沿って生じており, 固有層乳頭の線維が平行に走る場合に割線が生じる可能性もあると考え, 割線と粘膜固有層の線維走行との間の関係について観察した. 【材料と方法】解剖実習に供された御遺体5体(男性3人, 女性2人85から64才)から口唇を摘出し, 水酸化ナトリウム水侵軟法とタンニン-オスミュウム導電染色を施し, 一部の標本は乳頭配列に平行と直角に切断した. 次に, ブチルアルコールで凍結乾燥して金蒸着し, 走査型電子顕微鏡で粘膜固有層の表面とその断面を観察した. 【結果と考察】皮膚部では乳頭の配列が弱く, 乳頭間の固有層の線維は網目を成し, 乳頭では乳頭の頂上に向かって平行に線維が走る. 中間部の外帯でも乳頭間の固有層の線維は網目を成し, 乳頭では乳頭の頂上に向かって平行に走る線維と網目の両方がみられた. 中間部の内帯でも乳頭間の固有層の線維は網目を成し, 乳頭では基部は網目を形成するが上部では乳頭に平行に走る. 粘膜部では乳頭間の線維の網目は崩れ, 乳頭では線維が乳頭に平行および横に走る. どこの断面においても線維がかなりの距離を平行に走ることはなかった. 以上のことから固有層の表面の線維は網目を形成するために固有層の線維に沿って割線は生じず, 割線は固有層の線維には関係なく, 乳頭列に沿って生じると考えられる. |
---|---|
ISSN: | 0385-0137 |