セメント象牙境の構造と機能について

本研究の目的は, ヒト歯のセメント象牙境(CDJ)の構造と接着様式を明らかにすることにある. 【材料と方法】抜去直後の下顎第三大臼歯を, 光顕用としては脱灰後, パラフィン切片を作成しH-E, PAS, トルイジンブルー, 細網鍍銀染色を施した. 一部切片にはトリプシンとヒアルロニダーゼによる消化試験を行った. 透過型電顕用には, 脱灰後, 超薄切片を作成した. 走査型電顕用には, 研磨し脱灰後, 10%NaOHによる浸軟処理を施した. 【結果と考察】CDJは幅が2μm程で糖蛋白質に富み, セメント質と象牙質よりもコラゲン線維に乏しかった. 酵素処理によりCDJは染色性を失い, さらに長時間処...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 445
Main Authors 山本恒之, 土門卓文, 高橋茂, イスラムヌルル, 鈴木礼子, 脇田稔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:本研究の目的は, ヒト歯のセメント象牙境(CDJ)の構造と接着様式を明らかにすることにある. 【材料と方法】抜去直後の下顎第三大臼歯を, 光顕用としては脱灰後, パラフィン切片を作成しH-E, PAS, トルイジンブルー, 細網鍍銀染色を施した. 一部切片にはトリプシンとヒアルロニダーゼによる消化試験を行った. 透過型電顕用には, 脱灰後, 超薄切片を作成した. 走査型電顕用には, 研磨し脱灰後, 10%NaOHによる浸軟処理を施した. 【結果と考察】CDJは幅が2μm程で糖蛋白質に富み, セメント質と象牙質よりもコラゲン線維に乏しかった. 酵素処理によりCDJは染色性を失い, さらに長時間処理するとついには剥離した. 浸軟処理によりCDJは線維の乏しい溝となり, ついには剥離した. CDJを横切り, 象牙質基質線維と絡み合うようなセメント質の線維も認められた. このような線維同士の絡み合いは, 帯状あるいはシート状には存在せず, 象牙質に刺さるピンのような状態で散在していた. 上記処理のいずれも糖蛋白質は消化するがコラゲン線維は消化しないことから, CDJの接着には線維同士の絡み合いよりも糖蛋白質の接着性がより深く関与することが示唆された.
ISSN:0385-0137