口腔内日和見病原菌の罹患率調査

口腔内には約350種の細菌が生息するといわれており, その中には, 口腔気道系に対する起炎菌を含め様々な病原菌が存在する可能性がある. 今回我々は幼児から高齢者までの口腔内日和見菌の検出を試みたので報告する. 日和見病原菌の検出材料には歯垢, 咽頭, 舌を用いた. 日和見病原菌の罹患率では, 幼児で39.8%, 学童で23.4%, 就業年齢の一般成人で14%, 高齢者では34.4%であった. 幼児と小児では口腔気道系起炎菌が多く検出され, それ以外にMSSA, 腸内細菌, グルコース非発酵菌種の検出率が高かった. 高齢者ではカンジダの検出率が高く, 腸内細菌, グルコース非発酵菌種以外にセラチ...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 43; no. 5; p. 558
Main Authors 野村義明, 泉福英信, 井田博久, 霜島正浩, 花田信弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.08.2001
Japanese Association for Oral Biology
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ISSN0385-0137

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Summary:口腔内には約350種の細菌が生息するといわれており, その中には, 口腔気道系に対する起炎菌を含め様々な病原菌が存在する可能性がある. 今回我々は幼児から高齢者までの口腔内日和見菌の検出を試みたので報告する. 日和見病原菌の検出材料には歯垢, 咽頭, 舌を用いた. 日和見病原菌の罹患率では, 幼児で39.8%, 学童で23.4%, 就業年齢の一般成人で14%, 高齢者では34.4%であった. 幼児と小児では口腔気道系起炎菌が多く検出され, それ以外にMSSA, 腸内細菌, グルコース非発酵菌種の検出率が高かった. 高齢者ではカンジダの検出率が高く, 腸内細菌, グルコース非発酵菌種以外にセラチア菌, 肺炎桿菌等のいわゆる日和見感染菌が多く検出された. また, MRSAは老人からのみ検出された. 菌科医療従事者と一般医療従事者における日和見病原菌の罹患率を比較した研究では, 歯科医療従事者からは日和見病原菌が検出されなかったのに対し, 一般医療従事者では66.6%から検出され, 日和見病原菌の罹患に対し口腔衛生状態や労働環境の関連性が示唆された. また, 口腔内からの病原性微生物の除去方法を開発しミュータンスレンサ球菌の除菌をモデルとして臨床研究を行った. 本法によってミュータンスレンサ球菌が効率よく除菌され, さらに副作用の発現も認められず, 臨床応用可能な術式として非常に有用な方法であることが示唆された.
ISSN:0385-0137