ラット脳室内ニコチン投与による歯肉血流変化

【目的】喫煙は歯周病のリスクファクターである. タバコの有害物質のひとつとされるニコチンは生理活性物質でもあり, 副腎や交感神経節に作用し, 循環系に影響を与えている. ニコチンは血液脳関門により脳内への通過を妨げられないため, タバコにより摂取されたニコチンが中枢性に作用し, 循環系に影響を与える可能性がある. 今回の実験ではその可能性について検討するとともに, 中枢神経系の歯周病への影響について検討した. 【方法】本実験にはWistar系雄性ラットを用いた. ラットはウレタン, α-クロラロース混合麻酔下において, 脳定位固定装置に仰向けに固定し口蓋歯肉の血流をレーザードップラー血流計で測...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 45; no. 5; p. 322
Main Authors 中村太志, 小野堅太郎, 佐藤奈緒, 本田栄子, 横田誠, 稲永清敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 01.09.2003
Japanese Association for Oral Biology
Online AccessGet full text
ISSN0385-0137

Cover

More Information
Summary:【目的】喫煙は歯周病のリスクファクターである. タバコの有害物質のひとつとされるニコチンは生理活性物質でもあり, 副腎や交感神経節に作用し, 循環系に影響を与えている. ニコチンは血液脳関門により脳内への通過を妨げられないため, タバコにより摂取されたニコチンが中枢性に作用し, 循環系に影響を与える可能性がある. 今回の実験ではその可能性について検討するとともに, 中枢神経系の歯周病への影響について検討した. 【方法】本実験にはWistar系雄性ラットを用いた. ラットはウレタン, α-クロラロース混合麻酔下において, 脳定位固定装置に仰向けに固定し口蓋歯肉の血流をレーザードップラー血流計で測定した. 血圧は大腿動脈より計測を行った. ニコチンをラット脳室内に投与し, 投与後の歯肉血流, 血圧の変化を投与前と比較検討した. また, 血管コンダクタンスを算出し, ニコチン投与前後で比較した. 【結果】今回の実験結果において, ニコチン脳室内投与により歯肉血流が濃度依存性に減少を認めた. また, 血管コンダクタンスの低下を認めた. 【考察】喫煙により体内に取り込まれたニコチンは中枢性に全身の循環を変動させ, それにより末梢の歯肉において血管の収縮や血流の変化に影響を与える可能性が示唆された. これらは, 喫煙者の歯周病において歯肉の腫脹, 発赤があまり認められないわりに骨吸収が進行している現象や組織治癒遅延に関係していると考えられる.
ISSN:0385-0137