象牙質石灰化におけるMMP-2の役割

象牙芽細胞の分化に伴ってゼラチナーゼが発現されるが, その役割については不明点が多い. 我々が確立した培養条件下では, ウシ未萌出前歯由来の象牙芽細胞が突起の形成に呼応してハイドロキシアパタイトをマトリックス中に蓄積させるが, それに先立ち核形成の役割を担うと考えられるフォスフォフォリン(DPP)が, 分泌後の修飾:限定蛋白分解とカゼインキナーゼII(CKII)によるリン酸化を受け, 限定分解がリン酸化を大きく促進する. 今回我々は, その限定分解がMMP-2(ゼラチナーゼA)によることを示す結果を得たので, 象牙質の石灰化過程とMMP-2の発現の相関関係を考察する. (方法)培養ウシ象牙芽細...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 416
Main Authors 里吉正徳, 河田亮, 小泉忠彦, 寺中敏夫, 高垣裕子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
Japanese Association for Oral Biology
Online AccessGet full text
ISSN0385-0137

Cover

More Information
Summary:象牙芽細胞の分化に伴ってゼラチナーゼが発現されるが, その役割については不明点が多い. 我々が確立した培養条件下では, ウシ未萌出前歯由来の象牙芽細胞が突起の形成に呼応してハイドロキシアパタイトをマトリックス中に蓄積させるが, それに先立ち核形成の役割を担うと考えられるフォスフォフォリン(DPP)が, 分泌後の修飾:限定蛋白分解とカゼインキナーゼII(CKII)によるリン酸化を受け, 限定分解がリン酸化を大きく促進する. 今回我々は, その限定分解がMMP-2(ゼラチナーゼA)によることを示す結果を得たので, 象牙質の石灰化過程とMMP-2の発現の相関関係を考察する. (方法)培養ウシ象牙芽細胞を3日毎に回収し, RT-PCR法により培養基質を分解ると考えられるMMP-2及び9の発現を調べた. プライマーはヒトMMP-2(Biochem.J 320, 777-783, 1996), ウシMMP-9(MolBio Parasitol 69, 211-222, 1995)より設計, GAPDH(J Steroid Biodhem 57, 349-355, 1996)を用いた. さらにDPPと培養上清を酵素反応させ, リン蛋白の限定分解前と後でのCKIIによるDPPの33P-GTPからの33PO4転移を比較検討した. (結果と考察)培養上清中にはMr.72,000と95,000のMMP-2とMMP-9の存在が確認されるが, そのうちMMP-2は培養初期では活性が低く, 3週目に細胞突起の伸展, ALPの低下, 基質の石灰化が始まるのと呼応して上昇した. この時期の培養上清はDPPを断片化し, 更に断片化されたDPPが, CKIIによるリン酸化を受けやすくなることも, 我々の実験で明らかになった. 培養上清中の酵素活性の上昇と細胞内のメッセージの発現が一致することから, 象牙芽細胞の成熟に伴って発現されたMMP-2によるDPPの断片化がリン酸化を亢進させて石灰化に至らしめると予測された. 更に理化学研究所脳科学総合研究センターの糸原重美博士より供与されたMMP-2ノックアウトマウスを用いて組織化学的分析を行ったところ, 石灰化の遅延が示唆される結果も得られた.
ISSN:0385-0137