乳児腸内フローラによるEscherichia coli O157:H7排除機構の解析

「目的」志賀毒素産生性大腸菌(STEC)は腸管感染症の原因菌であり, 中でも血清型がO157:H7のものは人の腸炎の主要な原因菌として知られている. 乳幼児はE. coli O157:H7に対する感受性が高いが, その理由の一つに, 腸内フローラによる感染防御機構がうまく働いていないことが考えられる. 本研究では, 異なるE. coli O157:H7排除能を示すbaby-flora-associated(BFA)マウス(E. coli O157:H7排除能を持つBFA-3, キャリアとなるBFA-4)を作出し, そのBFA-3とBFA-4からの分離株を用いて, それぞれの排除能を反映するノト...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in腸内細菌学雑誌 Vol. 20; no. 2; p. 128
Main Authors 百瀬愛佳, 平山和宏, 伊藤喜久治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ビフィズス菌センター 01.04.2006
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:「目的」志賀毒素産生性大腸菌(STEC)は腸管感染症の原因菌であり, 中でも血清型がO157:H7のものは人の腸炎の主要な原因菌として知られている. 乳幼児はE. coli O157:H7に対する感受性が高いが, その理由の一つに, 腸内フローラによる感染防御機構がうまく働いていないことが考えられる. 本研究では, 異なるE. coli O157:H7排除能を示すbaby-flora-associated(BFA)マウス(E. coli O157:H7排除能を持つBFA-3, キャリアとなるBFA-4)を作出し, そのBFA-3とBFA-4からの分離株を用いて, それぞれの排除能を反映するノトバイオートマウス(GB-3, GB-4)を作製し, E. coli O157:H7排除機構の解析を行った. 「方法」まず, GB-3とGB-4にE. coli O157:H7を投与して消化管各部位を採取し, 培養法を用いてE. coli O157:H7菌数の分布を調べた. また, それぞれの盲腸内容物の50%懸濁液にE. coliO157:H7を接種し, 嫌気条件下での発育速度を調べた. 次に, 重層法と拡散法によりE. coliO157:H7に対する発育阻害物質の検索を行った. さらに, HPLCを用いてGB-3とGB-4の盲腸懸濁液中のアミノ酸含有量を解析し, その違いが盲腸懸濁液中でのE. coli O157:H7の発育速度に与える影響を調べた. また, BFAのenterobacteriaceae分離株とE. coli O157:H7との共培養を行い, アミノ酸の競合についても解析した. 「結果」GB-3とGB-4の盲腸以降の部位におけるE. coli O157:H7の菌数は, GB-3で有意に低く, また, 盲腸懸濁液中でのE. coli O157:H7発育速度は, GB-3で培養初期の発育速度に低下が見られた. GB-3とGB-4の盲腸内容物中に, E. coli O157:H7に対する発育阻害物質の存在は確認されなかった. GB-4と比較してGB-3の盲腸内容物中で最も含有量が少なかったアミノ酸はプロリンであり, GB-3盲腸懸濁液中でのE. coli O157:H7の発育速度は, プロリンの添加によって促進した. また, BFA-3から分離されたenterobacteriaceaeのうち, 最もE. coliO157:H7に対する発育阻害作用が認められたのはE. coliであり, その阻害作用はプロリンの添加によって減弱した.
ISSN:1343-0882