尿中カルシウム排泄量の新しい評価法 浸透圧補正法

尿中カルシウム/クレアチニン (Ca/Cr) 比は最も古くから用いられる骨代謝マーカーではあるが, 尿量の多寡と食塩摂取量の影響を受ける. 我々は尿中Caの新しい表現方法として, 尿浸透圧 (OSM) で尿量補正したCa値 (Ca/OSM) を求め, Ca/Crと対比した. 20歳~70歳代の健常女性を主な対象として, 尿中のCa, Cr, OSM, ナトリウム (Na), カリウム (K) を測定した. CaとNa, Kは各々OSM, Crにより尿量補正した. CrとOSMに対するCa/Crの相関係数 (r) は各々r=-0.386, r=-0.437と逆相関性が認められたが, 一方, Ca...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 34; no. 5; pp. 409 - 414
Main Authors 扇谷, 茂樹, 藤井, 芳夫, 藤田, 拓男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.05.1997
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Summary:尿中カルシウム/クレアチニン (Ca/Cr) 比は最も古くから用いられる骨代謝マーカーではあるが, 尿量の多寡と食塩摂取量の影響を受ける. 我々は尿中Caの新しい表現方法として, 尿浸透圧 (OSM) で尿量補正したCa値 (Ca/OSM) を求め, Ca/Crと対比した. 20歳~70歳代の健常女性を主な対象として, 尿中のCa, Cr, OSM, ナトリウム (Na), カリウム (K) を測定した. CaとNa, Kは各々OSM, Crにより尿量補正した. CrとOSMに対するCa/Crの相関係数 (r) は各々r=-0.386, r=-0.437と逆相関性が認められたが, 一方, Ca/OSMではCrおよびOSMとの関連性を示さない. Na/CrとCa/Crとのrは0.399で正相関が認められ, 一方, Ca/OSMにはNa濃度の影響はない. 24hr蓄尿と早朝第1, 2尿中Ca値の相関関係をみた. その結果, 蓄尿中のCa総量を体重 (kg) で除した値とのrは第1尿でCa/OSMがr=0.823, Ca/Crがr=0.641となり, 第2尿では各々0.653, 0.600を示した. 早朝第1尿中成分の加齢変化をみた結果, OSMとCrは加齢とともに有意に低下, またCa/OSMとCa/Cr, Na/Crは加齢とともに有意に増加した. 早朝第1尿中Ca排泄量が加齢の影響を受けないと仮定し, 20歳代のCa平均値を基準にしてOSM, Crの低下率から70歳代のCa予測値を算出して, 70歳代の実測平均値と比較した. その結果, Ca/OSMの実測値は予測値より131.5%, Ca/Crでは123.9%の高値を呈し, 加齢にともなうエストロゲン分泌低下によるとされる尿細管でのCa再吸収低下, または骨吸収亢進が示唆された. Ca/OSMはCa/Crにくらべて尿量やNa濃度の影響の少ない, 新しい尿中Ca指標であると考えられる. また, このように尿中Ca濃度を評価する際には, 24hr蓄尿の代用試料として用いうる早朝起床時第1尿 (Sleep Urine) の使用が適切であると考えられた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.34.409