抜歯窩治癒過程における実験的研究

演者らは抜歯窩の治癒における種々の実験的研究を行ってきた. 今回, 開放と閉鎖両創の抜歯窩治癒過程における骨新生と微細血管構築を観察し, その差異について調査した. 実験方法と材料:ニホンザルの両側上顎前歯を抜去した. 片側の抜歯窩はそのまま開放とし, 反対側の抜歯窩は粘膜縫合して閉鎖した. 施術した実験動物を2, 4, 8週経過毎に安楽死させ, アクリル樹脂微細血管注入法によって骨, 微細血管鋳型同時標本を作製し, 走査電顕で観察を行った. 結果と考察:術後2週では, 両側とも抜歯窩内は新生毛細血管で満たされていた. 術後4週では, 両側とも抜歯窩壁から新生骨小柱の形成を認めた. 開放側では...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 466
Main Authors 戸田伊紀, 諏訪文彦, 池宏海, 牧草一人, 竹村明道, 村岡正規, 権田悦通
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.1999
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Summary:演者らは抜歯窩の治癒における種々の実験的研究を行ってきた. 今回, 開放と閉鎖両創の抜歯窩治癒過程における骨新生と微細血管構築を観察し, その差異について調査した. 実験方法と材料:ニホンザルの両側上顎前歯を抜去した. 片側の抜歯窩はそのまま開放とし, 反対側の抜歯窩は粘膜縫合して閉鎖した. 施術した実験動物を2, 4, 8週経過毎に安楽死させ, アクリル樹脂微細血管注入法によって骨, 微細血管鋳型同時標本を作製し, 走査電顕で観察を行った. 結果と考察:術後2週では, 両側とも抜歯窩内は新生毛細血管で満たされていた. 術後4週では, 両側とも抜歯窩壁から新生骨小柱の形成を認めた. 開放側では窩壁から伸展した新生血管に沿って骨形成を, 閉鎖側では窩底側半分に骨形成を認めた. 術後8週では, 両側ともほぼ新生骨で抜歯窩は満たされていたが, 開放側では窩口部で陥凹を認めた. 閉鎖側では窩口部まで満たされ, 既存骨との境界が不明瞭であった. これは, 閉鎖創では粘膜部からの血液供給が早くなり, 治癒が早まったためと考えられる. また, 骨膜の早期の癒合により歯肉軟組織の落ち込みが阻止され, 創口部での陥凹もないと考えられた. したがって, 抜歯後の歯槽骨吸収をできるだけ低減するためには, 閉鎖創の方が望ましいと考えられる.
ISSN:0385-0137