老人保健施設におけるリハビリテーション
当施設は病院併設型の老健施設として平成元年3月開設した. 総合病院・健康管理センターを中核とした, 地域の包括医療システムの中で, 通過施設としての機能を果たすべく取り組んでいる. そのために円満な家庭復帰を目標とし, (1)ニーズの把握と初期評価, (2)施設内生活自立へ向けた看護・介護・リハ, (3)退所前訪問と退所時指導, (4)退所後の在宅生活支援の4つを柱とした. 今回は平成2年12月までに退所した延ベ291例(実数184例)を対象に老健施設の役割について検討した. 退所者184例の内訳は, 男62例, 女122例で平均年齢は79.6歳であった. 入所前の所在をみると, 家庭群では屋...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 28; no. 12; pp. 1043 - 1044 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
1991
社団法人日本リハビリテーション医学会 The Japanese Association of Rehabilitation Medicine |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 当施設は病院併設型の老健施設として平成元年3月開設した. 総合病院・健康管理センターを中核とした, 地域の包括医療システムの中で, 通過施設としての機能を果たすべく取り組んでいる. そのために円満な家庭復帰を目標とし, (1)ニーズの把握と初期評価, (2)施設内生活自立へ向けた看護・介護・リハ, (3)退所前訪問と退所時指導, (4)退所後の在宅生活支援の4つを柱とした. 今回は平成2年12月までに退所した延ベ291例(実数184例)を対象に老健施設の役割について検討した. 退所者184例の内訳は, 男62例, 女122例で平均年齢は79.6歳であった. 入所前の所在をみると, 家庭群では屋外・屋内生活自立での入所が64%を占めており, 病院群では屋内・ベッド上生活自立が63%を占めていた. 退所先をみると, 重度群で家庭復帰したのは32%, 軽度群で福祉施設に入所したのは65%であった. このことは家庭復帰が, 老人の身体的機能・生活能力と, 受け入れ側の家族の許容力の両者で決まることを示している. 所在の変化をみると, 家庭群では62%, 病院群では42%が家庭復帰していた. 家庭群では入所回数にかかわらず家庭復帰率は約60%とほぼ一定であった. 以上より老人保健施設の役割として, (1)機能訓練よりも老人の能力に応じた生活目標を設定し, 生活能力を高めに維持すること, (2)家族の介護力と介護負担を考慮した援助指導を行うことが必要だと考えた. <質疑応答> 長谷川幹(日産玉川病院):家庭から入所された患者さんで, 退所されたうち, 入所前後でどういう変化がありましたか. 林拓男:機能的に良くなって家庭復帰する例はむしろ少なく, 動作の安定性, 環境整備, 家庭生活の具体的指導によって, 家族の受け入れが良くなる例が多いように思われます. 江口寿栄夫(高知県立子鹿園):家庭からと病院からで老人保健施設の家庭復帰率の差があるのは, 患者の自立度とともに, 老人では家族の受け入れる意識の差があると思うのですが, その調整はなさいましたか. 林拓男:意識調査等はやっておりません. 家庭復帰には, 在宅サービスの量と質という受け皿の問題も大きいと思われます. 林拓男:老健施設でのリハプログラムとして, 歩行レベルの軽度群に対しては歩行安定性と耐久性アップを中心に, 重度群に対しては, 排泄自立を目標にベッドサイドでの起居移乗動作を中心に行っています. 痴呆は柄澤の分類で中等度以上としていますので, 約20%という数字ですが, 軽度を含めると約40%になります. |
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ISSN: | 0034-351X |