膿瘍を形成し胸腔穿破で発症した肝細胞癌の1例

症例は54歳男性.主訴は呼吸困難.胸部単純X線写真にて右胸水の貯留を認め,腹部CTでは肝S8に低吸収域と高吸収域の混在する5cm大の占拠性病変を認めた.胸腔ドレナージ,肝膿瘍ドレナージを行った.肝膿瘍ドレーン造影では右胸腔内との交通を認め,肝膿瘍の右胸腔内穿破と診断した.排液の細菌検査で細菌は検出されず,血中アメーバ抗体は正常上限の2倍であったが,ドレーン排液,便の鏡検ではアメーバ原虫は認めなかった.メトロニダゾールを含む抗生物質の投与とドレナージを行うも軽快せず, MRI検査を行ったところ肝細胞癌が疑われ,血管造影では肝右葉前上区域枝に腫瘍濃染像を認めたため肝細胞癌による肝膿瘍と診断した.手...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 65; no. 5; pp. 1337 - 1341
Main Authors 埜村, 真也, 高島, 勉, 仲田, 文造, 畑間, 昌博, 西野, 裕二, 平川, 弘聖
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本臨床外科学会 25.05.2004
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Summary:症例は54歳男性.主訴は呼吸困難.胸部単純X線写真にて右胸水の貯留を認め,腹部CTでは肝S8に低吸収域と高吸収域の混在する5cm大の占拠性病変を認めた.胸腔ドレナージ,肝膿瘍ドレナージを行った.肝膿瘍ドレーン造影では右胸腔内との交通を認め,肝膿瘍の右胸腔内穿破と診断した.排液の細菌検査で細菌は検出されず,血中アメーバ抗体は正常上限の2倍であったが,ドレーン排液,便の鏡検ではアメーバ原虫は認めなかった.メトロニダゾールを含む抗生物質の投与とドレナージを行うも軽快せず, MRI検査を行ったところ肝細胞癌が疑われ,血管造影では肝右葉前上区域枝に腫瘍濃染像を認めたため肝細胞癌による肝膿瘍と診断した.手術は肝S8部分切除,瘻孔部切除術を施行した.未治療の肝細胞癌に膿瘍を形成し,胸腔内に穿破したこの希有な症例に対し,若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.65.1337