加齢に伴う骨塩量減少に影響する因子 カルシウム摂取及び身体活動の影響
老年者の骨塩量に対する栄養素摂取及び日常身体活動の影響について検討した. 対象は東京都老人ホーム健康寮に在住する老人85名 (男性39名, 女性46名) で, その年齢範囲は65歳から96歳, 平均77.8±6.0歳である. 骨塩量測定にはMD法を用い, 骨密度 (GSmin.) と骨皮質幅 (MCI) を測定した. 3日間の全給食残量を秤り, カルシウム, リン, 蛋白質および脂肪の1日当たり摂取量を算出した. 身体活動状況は生活習慣, 歩行動作等について聞取り調査を行い, 身体活動スコアを求めた. 年齢で補正したカルシウム摂取量と GSmin. の関係は男女ともに有意な正相関がみられ, M...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 24; no. 6; pp. 544 - 554 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.11.1987
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.24.544 |
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Summary: | 老年者の骨塩量に対する栄養素摂取及び日常身体活動の影響について検討した. 対象は東京都老人ホーム健康寮に在住する老人85名 (男性39名, 女性46名) で, その年齢範囲は65歳から96歳, 平均77.8±6.0歳である. 骨塩量測定にはMD法を用い, 骨密度 (GSmin.) と骨皮質幅 (MCI) を測定した. 3日間の全給食残量を秤り, カルシウム, リン, 蛋白質および脂肪の1日当たり摂取量を算出した. 身体活動状況は生活習慣, 歩行動作等について聞取り調査を行い, 身体活動スコアを求めた. 年齢で補正したカルシウム摂取量と GSmin. の関係は男女ともに有意な正相関がみられ, MCIについては男性に有意な関連が見られた. 牛乳摂取群における GSmin. 平均値は非摂取群のそれに比し高値を示した. リン, 蛋白質, 脂肪の各摂取量が増加すると骨塩量も高値を示す傾向が見られたが, これは偏相関係数による分析により, これらの栄養素を含む食品中にはカルシウムが豊富に含まれ, そのカルシウムの影響であると示唆された. 日常身体活動と骨塩量間に有意な正相関が認められ, 老年者においては, 軽い運動は骨代謝のバミランスを維持するよう作用し, さらに身体活動を高めることにより体力, 食事量を増し, 結果的に体重, 筋力を介して骨塩量に好影響を及ぼすものと推察された. この種の調査にあってはいずれが原因でいずれが結果であると論じ難い面があるが, 老年者の骨塩量減少防止には, カルシウムを多く含む食物の摂取と日常の適度な運動が重要であると考えられた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.24.544 |