エナメル質結晶の大きさのX線回折法による推定

エナメル質の無機質部分は正常な硬組織のなかでもっとも結晶性の高い生体アパタイトで構成されている. エナメル質結晶の大きさと形の情報は, 形成過程の解明のみならず, エナメル質う蝕形成過程に対しても重要な因子である. このエナメル質結晶の大きさは, 教科書的には長さ約1,000Aで幅が数100Aとされているが, 実際の報告では電子顕微鏡による観察とX線回折法による推定値に大きな隔たりがある. X線回折法は結晶についての広範囲で詳細な情報を得る方法として優れたものであるが, 電子顕微鏡の直接観察結果との不一致の原因についてこれまであまり問題にされてこなかった. 今回, エナメル質結晶の大きさについ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 42; no. 5; p. 405
Main Authors 寒河江登志朗, 鈴木久仁博, 千坂英輝, 横田ルミ, 小澤幸重
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 30.08.2000
Japanese Association for Oral Biology
Online AccessGet full text
ISSN0385-0137

Cover

More Information
Summary:エナメル質の無機質部分は正常な硬組織のなかでもっとも結晶性の高い生体アパタイトで構成されている. エナメル質結晶の大きさと形の情報は, 形成過程の解明のみならず, エナメル質う蝕形成過程に対しても重要な因子である. このエナメル質結晶の大きさは, 教科書的には長さ約1,000Aで幅が数100Aとされているが, 実際の報告では電子顕微鏡による観察とX線回折法による推定値に大きな隔たりがある. X線回折法は結晶についての広範囲で詳細な情報を得る方法として優れたものであるが, 電子顕微鏡の直接観察結果との不一致の原因についてこれまであまり問題にされてこなかった. 今回, エナメル質結晶の大きさについてX線回折法による解析を試み, 結晶の大きさについての方法論的な差異を明らかにした. ヒト第3大臼歯から削り出し, 200meshを通過したエナメル質粉末を用いて, X線回折パターンを記録した. ノイズの除去, ピーク分離処理, ベースライン捕正を施した後, 機械的なピークの広がりとKα二重線の影響をStokesのFourier法を用いて除去して純粋なピークプロファイルを得た. このピークプロファイルを積分幅による方法で, 結晶の大きさと結晶格子の乱れを同時に解析した. その結果, 結品の大きさはc軸方向で約550A, a軸方向で約210A, 格子の乱れはそれぞれ約0.7%と約0.4%の値を得た. 電子顕微鏡で見るひとつの結晶はここでいう結晶の集合体であると考えられた.
ISSN:0385-0137