ガラクトオリゴ糖からの酪酸の産生に関わるヒト腸内細菌について
【目的】腸内で産生される短鎖脂肪酸の一つである酪酸は, 大腸機能の調節・維持に重要な役割を果たしている. プレバイオティクスであるガラクトオリゴ糖(GOS)は, 酪酸の産生を促進する. そのとき, 酪酸の産生に関わる菌としては, (1)GOSを直接資化して産生する菌, (2)ビフィズス菌がGOSを代謝した結果生じた乳酸を酪酸へと変換する菌の2種類が考えられる. しかし, 実際どのような菌が関わっているかはわかっていない. そこで本研究では, 腸内におけるGOSからの酪酸の産生に関与する菌について調べた. 【方法】各種ヒト腸内細菌(21属85菌種)の中から, 乳酸を基質にして酪酸を産生する菌を選...
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Published in | 腸内細菌学雑誌 Vol. 22; no. 2; p. 49 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本ビフィズス菌センター
01.04.2008
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Summary: | 【目的】腸内で産生される短鎖脂肪酸の一つである酪酸は, 大腸機能の調節・維持に重要な役割を果たしている. プレバイオティクスであるガラクトオリゴ糖(GOS)は, 酪酸の産生を促進する. そのとき, 酪酸の産生に関わる菌としては, (1)GOSを直接資化して産生する菌, (2)ビフィズス菌がGOSを代謝した結果生じた乳酸を酪酸へと変換する菌の2種類が考えられる. しかし, 実際どのような菌が関わっているかはわかっていない. そこで本研究では, 腸内におけるGOSからの酪酸の産生に関与する菌について調べた. 【方法】各種ヒト腸内細菌(21属85菌種)の中から, 乳酸を基質にして酪酸を産生する菌を選出した. さらに, これらの菌に対する菌種特異的プライマーを作製し, 健常成人25名を対象に糞便中におけるこれらの菌数を定量的PCRにより測定した. また, 乳酸を酪酸に変換する菌およびヒト腸内優勢菌(6属11菌種)を対象に, GOSから酪酸を産生する能力を調べた. さらに, 健常成人5名の糞便にGOSを添加し, 乳酸を酪酸に変換する菌, およびGOSから直接酪酸を産生する菌の菌数を定量的PCRにより測定し, それらの菌数増加を指標にしてどの菌が酪酸の産生に関与しているかを推定した. 【結果および考察】各種ヒト腸内細菌のうち8菌種が乳酸を酪酸に変換する活性を示し, その中の(5菌種Eubacterium hallii等)がヒト糞便から検出された. これら5菌種は, いずれもGOSから酪酸を産生しなかった. 一方, ヒト腸内優勢菌のうち, E. rectale等の3菌種がGOSを直接資化して酪酸を産生した. また, 糞便へのGOSの添加により, ビフィズス菌, 乳酸を酪酸に変換する菌, およびGOSから直接酪酸を産生する菌が増加した. このことから, 腸内におけるGOSからの酪酸の産生には, ビフィズス菌がGOSから産生した乳酸を酪酸に変換する菌とGOSから直接産生する菌の両方が寄与していると考えられた. |
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ISSN: | 1343-0882 |