可視化手法を用いた細胞機能の調節
医薬品の開発に当たって, 実験動物を用いた前臨床試験が重要であることは論を俟たない. 遺伝子ノックアウトやトランスジェニック動物の解析から, それまでの常識が覆る事実が明るみに出されることもあるが, これもin vivo実験が威力を発揮する好例である. 他方cell free実験系にも存在意義があり, 生化学や分子生物学の研究は, 多くがこの手法においてなされ, 数々の大きな成果をあげてきた. この両者の中間にあたる手法が細胞培養実験系で, 細胞が生きているという大きな特徴があり, 生理化学的手法に属する. 培養技術の長足な進歩に伴って, 神経細胞, 血管内皮細胞, 破骨細胞等々in vivo...
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Published in | 昭和歯学会雑誌 Vol. 19; no. 2; p. 223 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学・昭和歯学会
30.06.1999
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ISSN | 0285-922X |
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Summary: | 医薬品の開発に当たって, 実験動物を用いた前臨床試験が重要であることは論を俟たない. 遺伝子ノックアウトやトランスジェニック動物の解析から, それまでの常識が覆る事実が明るみに出されることもあるが, これもin vivo実験が威力を発揮する好例である. 他方cell free実験系にも存在意義があり, 生化学や分子生物学の研究は, 多くがこの手法においてなされ, 数々の大きな成果をあげてきた. この両者の中間にあたる手法が細胞培養実験系で, 細胞が生きているという大きな特徴があり, 生理化学的手法に属する. 培養技術の長足な進歩に伴って, 神経細胞, 血管内皮細胞, 破骨細胞等々in vivoにおいてそれぞれ特有の機能を発揮している多くの細胞種を, それぞれの機能を保持したまま長期間in vivoの環境下に培養・維持することが可能になった. 細胞は実に巧妙に, かつ精微に形づくられた有機生命体であるので, これを詳細に観察し, その仕組みをほんの少し垣間見ることによって, しばしば医薬品開発への大きなヒントを得ることができる. さらにこの培養細胞を用いた新規の実験系を考案することによりin vivoやcell free実験系を用いるだけでは, 決して得ることのできない重要な真実を発見することも可能である. 炎症には多くのケミカルメディエータが関与するが, そのうちPGE2ひとつを取り上げてみても, 複数のレセプターの存在など最近新しい事実がつぎつぎに明らかにされているので, それらの重要性をいち早く認識し, 水平思考することが重要であろう. PGE_2 が生合成されるときに働く2つの重要な酵素, ホスフォリパーゼA_2 とシクロオキシゲナーゼの細胞内の局在性が明らかになったこと, カルシウムイオンの働く場所が, 核膜に局在すること, つくられたPG類の膜透過性を調節する蛋白が存在するらしいこと, シクロオキシゲナーゼの活性化にフリーラジカルが関与すること, などから今後topology的発想が必要になってこよう. |
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ISSN: | 0285-922X |