象牙質の自己蛍光:齲蝕による変化
演者らは, これまでにヒト象牙質の自己蛍光特性の部位差や加齢に伴う変化を, ナノ秒時間分解蛍光顕微鏡を用いて研究してきた. 今回は, 象牙質における健全部と齲蝕部および境界部での自己蛍光を検討した. 【方法】抜去された齲蝕部を有した永久歯(約2年間冷70%エタノール中に保存)の厚さ500μmの切片を作製し, 365もしくは330nmの励起光を切片に照射して自己蛍光を測定した. 【結果, 考察】静的測定では, 健全部の象牙質の蛍光ピーク波長は440土10nmであった. 齲蝕部では, 蛍光強度は約1/4以下に滅少し, ピーク波長は, 20nm長波長側へシフトした. 齲蝕部や境界部の蛍光減衰時間(動...
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Published in | 歯科基礎医学会雑誌 Vol. 41; no. 5; p. 445 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
歯科基礎医学会
30.08.1999
Japanese Association for Oral Biology |
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ISSN | 0385-0137 |
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Summary: | 演者らは, これまでにヒト象牙質の自己蛍光特性の部位差や加齢に伴う変化を, ナノ秒時間分解蛍光顕微鏡を用いて研究してきた. 今回は, 象牙質における健全部と齲蝕部および境界部での自己蛍光を検討した. 【方法】抜去された齲蝕部を有した永久歯(約2年間冷70%エタノール中に保存)の厚さ500μmの切片を作製し, 365もしくは330nmの励起光を切片に照射して自己蛍光を測定した. 【結果, 考察】静的測定では, 健全部の象牙質の蛍光ピーク波長は440土10nmであった. 齲蝕部では, 蛍光強度は約1/4以下に滅少し, ピーク波長は, 20nm長波長側へシフトした. 齲蝕部や境界部の蛍光減衰時間(動的測定によるナノ秒域の減衰)は健全部に比較して速かった. これらの所見は, 齲蝕部では健全部の成分の崩壊あるいは異なる蛍光物質の生成がなされたことを示唆している. 【結論】象牙質の齲蝕の発見には, 紫外線照射による440nmの蛍光強度の減少とピーク波長の長波長側へのシフトおよびナノ秒蛍光特性が指標になる. 謝辞:相木一麿氏(大阪大学)の協力に感謝します. 本研究の一部は, 平成11年度文部省科研費基盤研究(B)No. 11480257の助成による. |
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ISSN: | 0385-0137 |