高齢者における血清可溶性IL-2受容体濃度の臨床医学的な意義 systemic nutritional index としての検討
急性疾患や悪性腫瘍を罹患していない高齢者に認められる, 軽度に上昇したsIL2R値の臨床医学的な意義ついて検討した. 脳梗塞後遺症のために特別養護老人ホームで生活している高齢者で発熱や明らかな感染症, 急性炎症症状や疼痛などの自覚的臨床症状のあるものや, 免疫学的に影響する治療を受けているものは除外した35例を対象にして, 既往歴・現病歴より悪性腫瘍またはその疑いのない高齢者24名 (NC群) と, 悪性腫瘍はあるが安定している高齢者11名 (CA群) に群別した. 血清学的な一般検査, CD4およびCD8陽性リンパ球数, 血清可溶性IL-2受容体濃度 (sIL2R値) を測定し, NC群をs...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 39; no. 4; pp. 409 - 413 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.07.2002
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Subjects | |
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Summary: | 急性疾患や悪性腫瘍を罹患していない高齢者に認められる, 軽度に上昇したsIL2R値の臨床医学的な意義ついて検討した. 脳梗塞後遺症のために特別養護老人ホームで生活している高齢者で発熱や明らかな感染症, 急性炎症症状や疼痛などの自覚的臨床症状のあるものや, 免疫学的に影響する治療を受けているものは除外した35例を対象にして, 既往歴・現病歴より悪性腫瘍またはその疑いのない高齢者24名 (NC群) と, 悪性腫瘍はあるが安定している高齢者11名 (CA群) に群別した. 血清学的な一般検査, CD4およびCD8陽性リンパ球数, 血清可溶性IL-2受容体濃度 (sIL2R値) を測定し, NC群をsIL2R値が883U/mL以下 (15例, Control 群), 884U/mL以上 (9例, NH群) にわけ追跡した. Control 群とNH群との間で性・年齢差は無く, ADL score, Alb, BUN, T. Chol, Pettigrew の prognostic nutritional index (PNI) は有意差を認めた. sIL2R値に関する共通因子の解析では, NC群で Cre, BUNで正の相関関係を認め, Alb, T. Chol, ADL score, PNIで負の相関関係を認めた. CA群では Control 群と比較してsIL2R, Alb, TP, T. Chol, β-Lipo, PNIは有意差を認めたが, sIL2値に関する共通因子や相関関係は無かった. 生存率は Control 群の24カ月間の予後がNH群より有意に良好であったが, CA群との有意差は無かった. 軽度に増加しているsIL2R値は悪性腫瘍を罹患していない慢性期の安定している高齢者において, 栄養状態など不顕性に悪化している全身状態と密接な関係があり, 短期的な予後とも関連しうることが示唆された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.39.409 |