がん患者において自宅での看取りが実現できた要因の考察 過去3年間のデータ分析より
1.はじめに 介護保険等の整備や法改正を受け、在宅医療・訪問看護への社会的な期待はますます高まっている。特に在宅での看取り(以後在宅看取り)を40%に増やそうとの目標を厚労省が打ち出している。今回当訪問看護ステーションでの過去3年間のがん患者のターミナル看護に関してデータを整理分析し、在宅看取り率は28%であった。そこでこのデータをさらに分析して、在宅看取りが実現できた要因について明らかにしたいと考えた。 2.目的 (1)当訪問看護ステーションでのがん患者の在宅看取りの現状を明らかにする (2)在宅看取りの実現に関連した要因と今後の課題について明らかにする 3.方法 <対象> 2004...
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Published in | 日本農村医学会学術総会抄録集 p. 74 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2008
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.74.0 |
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Summary: | 1.はじめに 介護保険等の整備や法改正を受け、在宅医療・訪問看護への社会的な期待はますます高まっている。特に在宅での看取り(以後在宅看取り)を40%に増やそうとの目標を厚労省が打ち出している。今回当訪問看護ステーションでの過去3年間のがん患者のターミナル看護に関してデータを整理分析し、在宅看取り率は28%であった。そこでこのデータをさらに分析して、在宅看取りが実現できた要因について明らかにしたいと考えた。 2.目的 (1)当訪問看護ステーションでのがん患者の在宅看取りの現状を明らかにする (2)在宅看取りの実現に関連した要因と今後の課題について明らかにする 3.方法 <対象> 2004年1月1日から2006年12月31日までに当ステーションに登録したがん患者で、調査開始の2006年4月までに死亡した症例。 <方法> (1)登録者名簿より、その死亡場所が在宅とそれ以外でその数を拾いだす (2)在宅看取りができた事例と希望していたができなかった事例に関して、訪問看護指示書や日々の看護記録等より患者背景や経過を抽出して、在宅看取りが実現した要因を分析する 4.結果 在宅看取りができたのは25事例、漠然とながら希望していたが病院で死亡したのは15事例あった。それらの内訳を次の表に示す。 5.考察 当訪問看護ステーションのがん患者の在宅看取り率は28.1%と、全国平均5%に比べ高かったのは、同法人病院の医師が主治医であるケースが多く、また往診専門医師が関わり、往診の体制や症状コントロール等医師との連携が密に取れたことが大きな要因と思われる。在宅看取り例では10例は最初から希望があったが、4例は医師が往診で勧めており、11例は介護をする中で自信と決心を強めていった。この11例中8例が30日以上の訪問期間があり、看護介入の効果の結果といえよう。 一方漠然とながら看取りの希望があったが実現しなかった事例では、看取り事例よりかなり訪問期間が短く、80%が訪問期間20日以内で、10日以内は9例もあり、うち7例は希望があいまいな上に、疼痛の増強や状態の急変で家族がパニックとなり病院搬送した。短い訪問期間では症状の予測やその指導、症状コントロールや訪問頻度も十分に考慮できず、看取りへのサポートは不可能といえる。また介護協力者がなく不安が増強したり、主介護者の就労事例もあり、家族の介護力の正しい評価も必要である。 がんの極終末期は状態の変化が大きく、家族の適応は難しく、医療職も対応が間に合わないこともある。本人と家族の望むような最期を実現するためには、できる限り早い時期に、在宅療養に向けてや最期の過ごし方について、本人・家族、各職種間の調整と連携が是非必要である。 |
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Bibliography: | 1F026 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.74.0 |