WBGT値に「湿度が7割」寄与するという誤認識について
WBGT(wet bulb globe temperature:湿球黒球温度)は,わが国においては労働環境や運動環境だけでなく,一般向けに「暑さ指数」として熱中症の注意喚起に用いられている.熱中症予防の普及啓発において,WBGT算定式に組み込まれている自然湿球温度を相対湿度の指標として解説した図解が広く引用され,「熱中症リスクの指標であるWBGT(暑さ指数)には相対湿度の寄与が7割で,気温の寄与は1割にすぎない」という誤った認識が拡がった.熱中症予防において相対湿度のみにとらわれ気温を軽視することは極めて危険であり,その結果,熱中症リスクを増大させてしまう.WBGTの誤った解説を訂正し,気温と...
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Published in | 日本生気象学会雑誌 Vol. 62; no. 1; pp. 13 - 19 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本生気象学会
16.07.2025
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Subjects | |
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ISSN | 0389-1313 1347-7617 |
DOI | 10.11227/seikisho.62.13 |
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Summary: | WBGT(wet bulb globe temperature:湿球黒球温度)は,わが国においては労働環境や運動環境だけでなく,一般向けに「暑さ指数」として熱中症の注意喚起に用いられている.熱中症予防の普及啓発において,WBGT算定式に組み込まれている自然湿球温度を相対湿度の指標として解説した図解が広く引用され,「熱中症リスクの指標であるWBGT(暑さ指数)には相対湿度の寄与が7割で,気温の寄与は1割にすぎない」という誤った認識が拡がった.熱中症予防において相対湿度のみにとらわれ気温を軽視することは極めて危険であり,その結果,熱中症リスクを増大させてしまう.WBGTの誤った解説を訂正し,気温と相対湿度が身体の放熱にどのように影響して熱中症になるのか,そのしくみと熱中症を予防する方法を対応づけ,国民に正しい知識を広めることが急務である. |
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ISSN: | 0389-1313 1347-7617 |
DOI: | 10.11227/seikisho.62.13 |