患者の同性パートナーと患者と疎遠な家族等の脳死下臓器提供の意思決定における院内移植コーディネーターによる総意形成支援

「要旨」本研究は, 患者の同性パートナーと患者と疎遠な家族等による脳死下臓器提供の総意形成過程を支援した院内移植コーディネーター (以下, 院内Co) の実践を分析し, 役割を明らかにすることを目的とした. パートナーと家族等に半構造化インタビューを行い, 脳死下臓器提供の総意形成に至る感情と, パートナーと家族等の関係性の変化を分析した. パートナーと家族等は, 患者の入院を契機に初めて会った. 疎遠であった家族等は, 延命拒否とともに臓器提供を希望した. しかし, 院内Coは, 家族等は疎遠であったため患者の意思を推定する情報に乏しく, 長年のパートナーが意思決定のキーパーソンであると考え...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in家族看護学研究 Vol. 27; no. 2; pp. 116 - 127
Main Authors 石橋ひろ子, 朝居朋子, 久納智子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本家族看護学会 31.03.2022
Online AccessGet full text
ISSN1341-8351

Cover

More Information
Summary:「要旨」本研究は, 患者の同性パートナーと患者と疎遠な家族等による脳死下臓器提供の総意形成過程を支援した院内移植コーディネーター (以下, 院内Co) の実践を分析し, 役割を明らかにすることを目的とした. パートナーと家族等に半構造化インタビューを行い, 脳死下臓器提供の総意形成に至る感情と, パートナーと家族等の関係性の変化を分析した. パートナーと家族等は, 患者の入院を契機に初めて会った. 疎遠であった家族等は, 延命拒否とともに臓器提供を希望した. しかし, 院内Coは, 家族等は疎遠であったため患者の意思を推定する情報に乏しく, 長年のパートナーが意思決定のキーパーソンであると考え, パートナーも含めた総意形成を家族等に提案した. 家族等がパートナーに臓器提供の同意を求めたため, 院内Coはパートナーの発言し難い立場を懸念し, 代弁者となることを伝えた. その後, パートナーと家族等は対話を重ねることで, パートナーは家族等に受け入れられ, 新しい関係性が築かれた. また, 院内Coが入院病棟の医師や看護師にパートナーへの配慮を求めたことで, パートナーは看取りのケアに参加でき, 臓器提供を肯定的に受け止めることができた. 家族形態が多様化する現在, 家族等が患者の医療における意思決定を行う際, 院内Coは家族等の範囲を的確に判断し, 弱者を擁護した上で家族等の一人ひとりが同等の立場で意見表明でき, 患者の最善を考えた総意形成ができるように支援する必要がある.
ISSN:1341-8351