学会誌掲載論文から見た臨床看護職が行っている看護研究の現状と課題

「要旨」 【目的】 本研究の目的は, 臨床看護職による学会誌掲載論文の現状を把握し, EBPの推進に寄与できる看護研究の実践に向け, その課題を明らかにすることである. 【研究方法】 2004年から2008年の5年間に25学術誌に掲載された原著論文, 研究報告, 実践報告として掲載された論文1,545編を対象とした. それら論文を「研究体制」, 「論文の種類」, 「研究対象」, 「データ収集方法」, 「倫理的配慮」, 「研究法」, 「研究デザイン」の側面から分類し, 自作の研究デザイン別チェックリストに従い論文の記述内容を検討した. 【結果】 臨床看護職が第一著者である論文は210編(全体の1...

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Published in兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 Vol. 19; pp. 1 - 15
Main Authors 北島洋子, 西平倫子, 西谷美保, 太尾元美, 宮芝智子, 坂下玲子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所 01.03.2012
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Summary:「要旨」 【目的】 本研究の目的は, 臨床看護職による学会誌掲載論文の現状を把握し, EBPの推進に寄与できる看護研究の実践に向け, その課題を明らかにすることである. 【研究方法】 2004年から2008年の5年間に25学術誌に掲載された原著論文, 研究報告, 実践報告として掲載された論文1,545編を対象とした. それら論文を「研究体制」, 「論文の種類」, 「研究対象」, 「データ収集方法」, 「倫理的配慮」, 「研究法」, 「研究デザイン」の側面から分類し, 自作の研究デザイン別チェックリストに従い論文の記述内容を検討した. 【結果】 臨床看護職が第一著者である論文は210編(全体の13.6%)であり, 論文の種類は研究報告, 実践報告の占める割合が大きく, 原著は42編であった. 臨床所属の看護職が第一著者である論文の割合は5年間でやや減少傾向にあった. 研究デザイン別にみると質的記述的研究が最も多く, 次いで事例研究, 実態調査・量的記述的研究であった. 質的研究のうち事例研究はResearch Questionが明確でない文献が多かった. 実態調査・量的記述的研究のほとんど(85.7%)は標本の代表性に関する記述がなく, 便宜的サンプリングが実施されていた. 量的研究全般において, 収集する変数の説明が明確でなく, 自作アンケートによるデータ収集が多かった. 倫理的な配慮において, 施設等の研究倫理審査を受けた記載のある論文は33編(17.0%)であった. 【考察】 臨床看護職による研究は看護のエビデンスの構築に充分寄与していないことが示唆された. 質的研究のうち事例研究は, ベッドサイドの経験知を積み重ねる臨床看護職に適した研究デザインであるが, Research Questionを明確にし, 緻密な研究のプロセスを踏む必要があると考えられた. 量的研究は妥当性・信頼性の検討を経た質問票の使用により, より質の高い研究が可能になると考えられた. 今後, 教育・研究機関との連携等により, 科学的研究法に添って研究を実施することで, より一層のEBPへの寄与が可能となることが示唆された.
ISSN:1881-6592