仮性瘤形成に対する胸腹部大動脈空置術後10年を経て人工血管十二指腸瘻を生じたベーチェット病の1例

症例は41歳の女性で25歳時に不全型ベーチェット病の診断を受けた.31歳時左腎動脈分岐部に巨大な仮性動脈瘤が生じ,仮性瘤および腹腔動脈・上腸間膜動脈・左右腎動脈を含む胸腹部大動脈空置・解剖学的人工血管バイパス術が行われた.その10年後人工血管十二指腸瘻を生じ,人工血管を含む感染巣の完全切除と非解剖学的血行再建術を施行した.本症例では下腸間膜動脈が全腹腔内臓器に対する唯一の血流供給源となっており,術中広範な臓器虚血の生ずる可能性が危惧された.そこで腹腔内臓器虚血の指標として肝静脈血酸素飽和度の持続モニタリングを行い,安全に手術を行うことができた.ベーチェット病に伴う血管病変では遠隔期に仮性瘤を生...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 31; no. 5; pp. 337 - 340
Main Authors 志村, 仁史, 茂木, 健司, 大音, 俊明, 増田, 政久, 中島, 伸之, 中谷, 充, 林田, 直樹, ピアス, 洋子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.09.2002
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
The Japanese Society for Cardiouascular Surgery
Subjects
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.31.337

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Summary:症例は41歳の女性で25歳時に不全型ベーチェット病の診断を受けた.31歳時左腎動脈分岐部に巨大な仮性動脈瘤が生じ,仮性瘤および腹腔動脈・上腸間膜動脈・左右腎動脈を含む胸腹部大動脈空置・解剖学的人工血管バイパス術が行われた.その10年後人工血管十二指腸瘻を生じ,人工血管を含む感染巣の完全切除と非解剖学的血行再建術を施行した.本症例では下腸間膜動脈が全腹腔内臓器に対する唯一の血流供給源となっており,術中広範な臓器虚血の生ずる可能性が危惧された.そこで腹腔内臓器虚血の指標として肝静脈血酸素飽和度の持続モニタリングを行い,安全に手術を行うことができた.ベーチェット病に伴う血管病変では遠隔期に仮性瘤を生ずることも多く,また非解剖学的再建術では大動脈断端が盲端となるため,今後とも注意深い経過観察が必要と思われた.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.31.337