p21とp53の二重染色による口腔癌の解析

【目的】p21はG1期で細胞周期を停止させ, p53はp21を誘導することによって結果的に細胞周期を停止させる. しかし, これらの遺伝子に異常があると, 細胞周期は停止せずに細胞増殖が進行する. 今回, 口腔癌における細胞増殖について明らかにするために主にp21とp53の発現を免疫組織化学的に二重染色し, 検討した. 【材料と方法】ホルマリン固定の高分化型口腔癌組織のパラフィン切片を抗ヒトp21MoABおよびENVISIONを用いて染色し, ついで抗ヒトp53MoABとENVISIONによって反応させ, AECおよびDABでそれぞれ発色させた. また, p21, p27およびp53をそれぞれ...

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Published in歯科基礎医学会雑誌 Vol. 44; no. 5; p. 478
Main Authors 方一如, 和唐雅博, 小谷順一郎, 畑慎太郎, 益野一哉, 田中昭男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 歯科基礎医学会 20.09.2002
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Summary:【目的】p21はG1期で細胞周期を停止させ, p53はp21を誘導することによって結果的に細胞周期を停止させる. しかし, これらの遺伝子に異常があると, 細胞周期は停止せずに細胞増殖が進行する. 今回, 口腔癌における細胞増殖について明らかにするために主にp21とp53の発現を免疫組織化学的に二重染色し, 検討した. 【材料と方法】ホルマリン固定の高分化型口腔癌組織のパラフィン切片を抗ヒトp21MoABおよびENVISIONを用いて染色し, ついで抗ヒトp53MoABとENVISIONによって反応させ, AECおよびDABでそれぞれ発色させた. また, p21, p27およびp53をそれぞれ検出し, 発色させ, 封入して検鏡した. 腫瘍の対照として腫瘍組織に含まれる非腫瘍性上皮組織を用いた. 【結果と考察】非腫瘍性上皮組織ではp53の反応はほとんどないが, p21およびp27の陽性細胞は多数認められた. 一方, 口腔癌ではp53の陽性細胞は多かったが, p21およびp27の陽性細胞は多い場合と, ほとんどみられない場合があった. 腫瘍細胞はp53のみ陽性であることが最も多く, ついでp21とp53が二重に陽性であることが多く, p21のみ陽性の場合は少ない傾向にあった. 癌細胞ではp53の変異は多いが, p21およびp27の変異は少なく, 後二者の分解活性が癌細胞では亢進しているといわれていることから, 高分化型の口腔癌ではp53の変異は多いが, p21およびp27の分解活性は異なり, 症例によって癌細胞の増殖特性が異なることが示唆される.
ISSN:0385-0137