肺膿瘍を合併し診断・治療に苦慮したキャピリアTB陰性肺結核の1例

「要旨」: 28歳男性. 健診の胸部単純X線検査で異常を指摘され, 胸部CTで両側上葉に結節影と粒状影を認めたため当院を受診. 喀痰, 胃液, 気管支洗浄液の抗酸菌塗抹・結核菌群PCRは陰性であったが, インターフェロンγ遊離試験が陽性であり, 臨床的に肺結核と診断しHERZ治療を開始した. 治療前より発熱と右中肺野に浸潤影が生じ, 開始後も改善せず空洞を伴う腫瘤様陰影になった. 治療開始4週後に気管支洗浄液の抗酸菌培養が陽性となったがCapilia(R)TB-Neo (キャピリアTB) で陰性が判明した. 増悪した陰影は一般菌による肺膿瘍と診断し, HERZ中止しSTFXを投与したところ症状...

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Published in結核 Vol. 93; no. 2; pp. 109 - 114
Main Authors 上野沙弥香, 佐野由佳, 吉岡宏治, 西野亮平, 池上靖彦, 山岡直樹, 倉岡敏彦, 大塚崇通, 近松絹代, 御手洗聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 15.02.2018
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ISSN0022-9776

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Summary:「要旨」: 28歳男性. 健診の胸部単純X線検査で異常を指摘され, 胸部CTで両側上葉に結節影と粒状影を認めたため当院を受診. 喀痰, 胃液, 気管支洗浄液の抗酸菌塗抹・結核菌群PCRは陰性であったが, インターフェロンγ遊離試験が陽性であり, 臨床的に肺結核と診断しHERZ治療を開始した. 治療前より発熱と右中肺野に浸潤影が生じ, 開始後も改善せず空洞を伴う腫瘤様陰影になった. 治療開始4週後に気管支洗浄液の抗酸菌培養が陽性となったがCapilia(R)TB-Neo (キャピリアTB) で陰性が判明した. 増悪した陰影は一般菌による肺膿瘍と診断し, HERZ中止しSTFXを投与したところ症状, 画像所見ともに改善した. 結核治療中止1週後にDDH法で抗酸菌は改めて結核菌群と診断され, HERZを再開した. 分離株の遺伝子検索を行った結果, mpb64遺伝子領域において63塩基対の欠失を認め, 本欠失がキャピリアTB陰性の原因と考えられた. キャピリアTBは結核菌群特異的な分泌蛋白のMPB64を検出する迅速簡便なキットで, 感度特異度ともに良好である. しかし本例のように稀に陰性となる例もあるため, 遺伝子学的手法など他の同定検査で必ず確認するべきと改めて認識させられた.
ISSN:0022-9776