「他領域からのトピックス」 膵癌治療用ワクチンの現状と未来

膵癌は5年生存率が5%と予後不良で, 新規抗癌剤や多剤併用療法の開発が世界中で行われており, 第4の治療法として期待を集めているのが癌免疫療法である. 標的となる腫瘍細胞に特異的に発現している内因性抗原である腫瘍関連抗原はプロテアソームによるプロセシング作用を受けてペプチド断片となる. 主要組織適合抗原(MHC, ヒトではHLA)Class I分子に結合し, ゴルジ体を介して細胞表面へ表出する. 表出したMHC(HLA)Class I-ペプチド複合体によりペプチドがCD8陽性T細胞に提示され, CD8陽性T細胞を活性化することにより抗原特異的なCTLが誘導される. ペプチドワクチン療法では腫瘍...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 116; no. 5; pp. 573 - 580
Main Authors 宮澤基樹, 山上裕機
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.05.2013
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Summary:膵癌は5年生存率が5%と予後不良で, 新規抗癌剤や多剤併用療法の開発が世界中で行われており, 第4の治療法として期待を集めているのが癌免疫療法である. 標的となる腫瘍細胞に特異的に発現している内因性抗原である腫瘍関連抗原はプロテアソームによるプロセシング作用を受けてペプチド断片となる. 主要組織適合抗原(MHC, ヒトではHLA)Class I分子に結合し, ゴルジ体を介して細胞表面へ表出する. 表出したMHC(HLA)Class I-ペプチド複合体によりペプチドがCD8陽性T細胞に提示され, CD8陽性T細胞を活性化することにより抗原特異的なCTLが誘導される. ペプチドワクチン療法では腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球(Cytotoxic T lymphocytes: CTL)を誘導し得るエピトープペプチドを腫瘍特異的な抗原から同定し, それを癌患者に投与する. 癌免疫療法の問題点として癌の免疫逃避機構が挙げられる.
ISSN:0030-6622