疫学的観点から見た先天性真珠腫 : 発生率と傾向
先天性真珠腫はほかの先天性疾患のように発生率に関するデータが示されたことはほとんどない. 発生率の算出には患者集約の観点から都市部よりも地方の医療機関の方が寧ろ有利になるのではとの発想から本疾患の疫学的研究を行った. 2000年1月~2021年3月の期間に大分県内で手術加療を行った先天性真珠腫の48症例49耳を対象とした. (1)県内の新生児出生数データから2000~2016年に出生した患者における発生率の算出, (2)発見・診断時の患者年齢の年次推移, (3)発見の契機・症状, (4)中耳真珠腫進展度Stage別の傾向比較について検討を行った. 各項目の結果として, (1)先天性真珠腫患者の...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 Vol. 125; no. 5; pp. 870 - 875 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
20.05.2022
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Summary: | 先天性真珠腫はほかの先天性疾患のように発生率に関するデータが示されたことはほとんどない. 発生率の算出には患者集約の観点から都市部よりも地方の医療機関の方が寧ろ有利になるのではとの発想から本疾患の疫学的研究を行った. 2000年1月~2021年3月の期間に大分県内で手術加療を行った先天性真珠腫の48症例49耳を対象とした. (1)県内の新生児出生数データから2000~2016年に出生した患者における発生率の算出, (2)発見・診断時の患者年齢の年次推移, (3)発見の契機・症状, (4)中耳真珠腫進展度Stage別の傾向比較について検討を行った. 各項目の結果として, (1)先天性真珠腫患者の10万出生当たりの発生率は平均28例と算出され, 出生年別の発生率は増加傾向にあることが示された. (2)診断・発見時の患者年齢は年を追うごとに発見・診断が若年化していたことが示された. (3)発見の契機や症状は就学前では中耳炎症状や別件受診が多数を占める一方, 就学後は検診や自覚的訴えによる難聴が最も多くなった. (4)進展度Stage別に見ると前半期より後半期は早期の段階で手術される症例が増えていたが統計学的有意差は認めなかった. 以上より, 先天性真珠腫の発生率は新生児10万人出生あたり28例となった. 同疾患の手術件数は増加傾向にあるが, これは発見率の増加が背景にあると考えられた. また, 年を追うごとに発見・診断は若年化することが示された. |
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ISSN: | 2436-5793 |