術前に膵嚢胞性腫瘍と診断された膵膿瘍の1例

症例は39歳の女性で, 心窩部不快感を主訴としUSで膵頭部の腫瘤を指摘され当院を紹介受診となった. 膵炎や腹部外傷の既往はなく, 血液生化学検査では軽度の炎症所見を認めるのみであった. CTで膵頭部に辺縁が濃染し内部に隔壁を有する多房性嚢胞を認めた. 各種画像診断を総合してmucinous cystic tumor (MCT) を疑い幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 摘出標本の割面では膿を貯留する膿瘍腔と粘液を貯留する嚢胞が集簇していた. また十二指腸球部にて十二指腸内腔と病変は交通していた. 十二指腸壁に線維化などの潰瘍に伴う変化を認めなかったことから十二指腸潰瘍の穿通というより膵膿...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 37; no. 8; pp. 1428 - 1432
Main Authors 谷島, 聡, 山崎, 晋, 島田, 和明, 佐野, 力, 江崎, 稔, 小出, 紀正, 小菅, 智男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.08.2004
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Summary:症例は39歳の女性で, 心窩部不快感を主訴としUSで膵頭部の腫瘤を指摘され当院を紹介受診となった. 膵炎や腹部外傷の既往はなく, 血液生化学検査では軽度の炎症所見を認めるのみであった. CTで膵頭部に辺縁が濃染し内部に隔壁を有する多房性嚢胞を認めた. 各種画像診断を総合してmucinous cystic tumor (MCT) を疑い幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 摘出標本の割面では膿を貯留する膿瘍腔と粘液を貯留する嚢胞が集簇していた. また十二指腸球部にて十二指腸内腔と病変は交通していた. 十二指腸壁に線維化などの潰瘍に伴う変化を認めなかったことから十二指腸潰瘍の穿通というより膵膿瘍の十二指腸穿破と最終診断した. 本例では病理診断から結果的には経過観察が選択の1つとなる症例であったが, 悪性化所見を疑うMCTと診断したこと, 全身状態良好な39歳という若年で本手術も過大侵襲とはならないと判断して手術に踏み切った.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.37.1428