常位胎盤早期剥離における臨床的検討

2008年1月から2012年12月の5年間に当院で分娩した5,354例のうち, 常位胎盤早期剥離と診断された54症例を対象とし, 院内管理例27例と母体搬送され急速遂娩を要した(以下, 母体搬送例)27例に分類し, 周産期背景と母児の予後について後方視的に比較検討した. 母体死亡例はなく, 6例で子宮内胎児死亡を認めた. 出血量や産科DIC(disseminated intravascular coagulopathy)スコアに両群間で有意差は認めず(各々p=0.088, p=0.400), またApgar score(5分値)や臍帯動脈血pH値に有意差は認めなかった(各々p=0.721, p...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 63; no. 2; pp. 105 - 113
Main Authors 尾臺珠美, 坂本雅恵, 高木香織, 小林真弓, 中村玲子, 吉田卓功, 羅ことい, 栗田郁, 藤岡陽子, 市川麻以子, 遠藤誠一, 島袋剛二, 宮坂尚幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 31.07.2014
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ISSN0468-2513

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Summary:2008年1月から2012年12月の5年間に当院で分娩した5,354例のうち, 常位胎盤早期剥離と診断された54症例を対象とし, 院内管理例27例と母体搬送され急速遂娩を要した(以下, 母体搬送例)27例に分類し, 周産期背景と母児の予後について後方視的に比較検討した. 母体死亡例はなく, 6例で子宮内胎児死亡を認めた. 出血量や産科DIC(disseminated intravascular coagulopathy)スコアに両群間で有意差は認めず(各々p=0.088, p=0.400), またApgar score(5分値)や臍帯動脈血pH値に有意差は認めなかった(各々p=0.721, p=0.154). 発症から急速遂娩までの時間は, 院内管理132±132分, 母体搬送279±172分で, 院内管理例で有意に短かったが(p<0.05), 産科DICスコア, Apgar score 5分値において有意差を認めなかった(各々p=0.639, p=0.453). 発症から急速遂娩までの時間と母児の予後に相関は認めず, 発症早期でも母児ともに重症化する症例があり, 早期診断と可及的迅速な対応が母児の救命・予後改善には必須である. 搬送が迅速に行なわれたとしても母児の予後改善につながらない可能性があり, 急速遂娩までの時間短縮のためには一次施設での急速遂娩が求められるが, そのためには急速遂娩後の周産期システム構築が必要である.
ISSN:0468-2513