大阪市における多剤耐性肺結核患者の背景および治療成績と服薬支援
「要旨」 : [目的] 今後の結核対策に資することを目的に, 大阪市における多剤耐性 (Multidrug resistant : MDR) 肺結核患者の背景および治療成績と服薬支援状況について分析した. [方法] 2009~2014年, 大阪市の新登録肺結核患者のうちMDR患者52人を対象とし, 比較群として2011~2014年, 大阪市の新登録肺結核患者のうち非MDR患者2,626人を用いた. 両群の, (1) 背景因子を比較し, 多重ロジスティック回帰分析にてMDRに影響する患者背景因子を検討し, (2) 治療成績およびDOTSタイプの比較, (3) DOTSタイプ別失敗中断割合の比較を...
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Published in | 結核 Vol. 92; no. 7; pp. 477 - 483 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本結核病学会
15.07.2017
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0022-9776 |
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Summary: | 「要旨」 : [目的] 今後の結核対策に資することを目的に, 大阪市における多剤耐性 (Multidrug resistant : MDR) 肺結核患者の背景および治療成績と服薬支援状況について分析した. [方法] 2009~2014年, 大阪市の新登録肺結核患者のうちMDR患者52人を対象とし, 比較群として2011~2014年, 大阪市の新登録肺結核患者のうち非MDR患者2,626人を用いた. 両群の, (1) 背景因子を比較し, 多重ロジスティック回帰分析にてMDRに影響する患者背景因子を検討し, (2) 治療成績およびDOTSタイプの比較, (3) DOTSタイプ別失敗中断割合の比較を行った. [結果] (1) MDR患者は52人(1.2%)で, MDRと関連した要因は, 再治療 (オッズ比6.91), 外国出生 (5.16), 有保険 (2.74) であった. (2) MDR患者では, 治療成功27.4%, 失敗中断23.6%, 転出17.6%, 死亡31.4%であり, 転出・死亡を除いた治療成績では, MDR患者は失敗中断割合46.2%と, 非MDR患者の5.6%より有意に高かった. MDR患者のDOTS未実施割合は9.8%と, 非MDR患者の2.2%より有意に高かった. (3) MDR患者ではBタイプでの失敗中断割合は47.4%, Cタイプ・未実施では42.9%であり有意差はなかった. 非MDR患者では, Bタイプでの失敗中断割合は3.2%, Cタイプ・未実施では8.9%と, Cタイプ・未実施で有意に失敗中断割合が高かった. [考察] MDR患者では失敗中断割合が高いにもかかわらず, DOTS未実施割合が高かったため, DOTS導入を徹底し質の高い患者支援が必要と考えられた. 一方で, DOTS強化のみによる治療成績向上には限界があるため, MDR患者における外国出生割合が高いことを考慮に入れるなど, 患者それぞれに応じた治療継続できるための医療提供と社会生活環境支援が重要と考えられた. |
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ISSN: | 0022-9776 |