カッティング動作中の床反力における内側ハムストリングの機能 - 選択的筋疲労条件を用いた検討

〔要旨〕 カッティング動作は下肢スポーツ損傷の受傷機転の一つであり, 内側ハムストリングがそのリスク低下に働くと考えられるが, 筋機能の詳細は不明である. 本研究は内側ハムストリングの選択的筋疲労介入前後のカッティング動作中の床反力を計測し, 内側ハムストリングの力学的機能を明らかにすることを目的とした. 8人の健康成人男性を対象として, 半腱様筋への神経筋電気刺激により筋疲労を誘発し, その前後で随意収縮課題とカッティング動作を実施した. 随意収縮課題として膝関節最大等尺性収縮と, 最大膝屈曲トルクの50%を発揮する最大下等尺性収縮を行った. 随意収縮課題中の最大膝屈曲トルクとハムストリング...

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Published in日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 30; no. 2; pp. 484 - 491
Main Authors 山津健太, 青木信裕, 片寄正樹, 渡邉耕太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床スポーツ医学会 30.04.2022
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ISSN1346-4159

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Summary:〔要旨〕 カッティング動作は下肢スポーツ損傷の受傷機転の一つであり, 内側ハムストリングがそのリスク低下に働くと考えられるが, 筋機能の詳細は不明である. 本研究は内側ハムストリングの選択的筋疲労介入前後のカッティング動作中の床反力を計測し, 内側ハムストリングの力学的機能を明らかにすることを目的とした. 8人の健康成人男性を対象として, 半腱様筋への神経筋電気刺激により筋疲労を誘発し, その前後で随意収縮課題とカッティング動作を実施した. 随意収縮課題として膝関節最大等尺性収縮と, 最大膝屈曲トルクの50%を発揮する最大下等尺性収縮を行った. 随意収縮課題中の最大膝屈曲トルクとハムストリングの筋電図中央周波数を算出し, 筋疲労の確認に用いた. カッティング動作として方向転換角度(45°, 90°)と助走速度(Slow, Fast)を組み合わせた4種類を実施した. 動作時の床反力の値から, 左右方向の推進成分と前後方向の減速・推進成分を筋疲労前後で比較した. 電気刺激による筋疲労の結果, 全対象者8人で内側ハムストリングの筋疲労を誘起した. 床反力は, 筋疲労前は前後方向の減速成分で4種類のカッティング動作方法全てで有意差を認めた. 一方, 筋疲労後には同一の助走速度で方向転換角度の異なる動作間での有意差が消失していた. このことより, 内側ハムストリングは方向転換角度に応じてカッティング動作時の減速をコントロールする機能を有すると考えられた.
ISSN:1346-4159