肥満関連疾患の予防に資する食品成分とその標的分子に関する研究 (令和6年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)

「要旨」: 慢性的な肥満状態は2型糖尿病や心血管系疾患, 認知機能低下などの肥満関連疾患の発症リスクを上昇する. 肥満の原因は食習慣の欧米化や運動不足による脂肪細胞の肥大化と過形成であり, これらを抑制することが肥満の効果的な予防策と考えられてきた. その一方で, 脂肪細胞の形成不全はホルモン産生バランスの変調を来すことから, 肥満予防と健康維持には脂肪細胞の「量的制御」だけでなく「質的制御」も重要であると考えられる. 筆者は, 嗜好飲料に含まれる呈味成分のメチルキサンチン類に着目し, これらが脂肪細胞を量的と質的の両側面から制御する分子メカニズムを明らかにすることに成功した. また, アフィ...

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Published in日本栄養・食糧学会誌 Vol. 77; no. 6; pp. 415 - 421
Main Author 三谷塁一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本栄養・食糧学会 10.12.2024
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Summary:「要旨」: 慢性的な肥満状態は2型糖尿病や心血管系疾患, 認知機能低下などの肥満関連疾患の発症リスクを上昇する. 肥満の原因は食習慣の欧米化や運動不足による脂肪細胞の肥大化と過形成であり, これらを抑制することが肥満の効果的な予防策と考えられてきた. その一方で, 脂肪細胞の形成不全はホルモン産生バランスの変調を来すことから, 肥満予防と健康維持には脂肪細胞の「量的制御」だけでなく「質的制御」も重要であると考えられる. 筆者は, 嗜好飲料に含まれる呈味成分のメチルキサンチン類に着目し, これらが脂肪細胞を量的と質的の両側面から制御する分子メカニズムを明らかにすることに成功した. また, アフィニティ精製を応用することで, 脂肪細胞において機能性を発揮するためのメチルキサンチン類の標的タンパク質をいくつか同定することに成功した. 以上の研究成果から, 呈味成分が抗肥満効果を持つ食品成分であることが明らかとなった.
ISSN:0287-3516