中山間地に住まう高齢者の通院困難性の地理情報学的分析

中山間地に住まう高齢者の通院困難性を明らかにするため, 次の2点について検討した. (1)当院内科外来を受診した連続188名の患者(74.5±10.0歳)を対象として, 〈近隣性〉の数学的表現であるボロノイ図を用い通院困難性に係わる地理情報学的分析を行なった. (2)被介護者世代の人口と介護者である子の世代の人口比をその地域の有する〈介護力〉と定義し, 2008年の豊田市人口統計資料を用い, 今後20年間の当院診療圏における介護力変遷の予測を行なった. (1)の分析により, (1)自力通院可能患者の平均年齢は70±9.8歳, 自力通院困難患者のそれは80±7.0歳であり, 80歳以降では通院介...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 61; no. 4; pp. 582 - 601
Main Authors 井出政芳, 早川富博, 柏田礼子, 米田恵理子, 安藤望, 渡口賢隆, 鈴木宣則, 小林真哉, 都築瑞夫, 江崎洋江, 加藤憲, 天野寛, 宮治眞
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 30.11.2012
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ISSN0468-2513

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Summary:中山間地に住まう高齢者の通院困難性を明らかにするため, 次の2点について検討した. (1)当院内科外来を受診した連続188名の患者(74.5±10.0歳)を対象として, 〈近隣性〉の数学的表現であるボロノイ図を用い通院困難性に係わる地理情報学的分析を行なった. (2)被介護者世代の人口と介護者である子の世代の人口比をその地域の有する〈介護力〉と定義し, 2008年の豊田市人口統計資料を用い, 今後20年間の当院診療圏における介護力変遷の予測を行なった. (1)の分析により, (1)自力通院可能患者の平均年齢は70±9.8歳, 自力通院困難患者のそれは80±7.0歳であり, 80歳以降では通院介助を要する高齢者が増加すること, (2)患者居住地のボロノイ領域面積(近隣性の指標)は3群に分類でき, これに対応する患者居住地の地図上へのプロットは3層のドーナッツ状構造を示すことが明らかとなった. (2)より, (3)2008年の時点において80歳未満の者に対する介護力は概ね1.0以下であり, 2008年の時点で50代の世代が将来介護される年齢に達した時, その通院困難性は現状より著しく増大することが明らかとなった. これらより, 3層のうち幹線道路から遠く離れた最外層に住まう80歳以上の高齢者の通院困難性は特に甚大であり, 医療福祉の実践においては最外層の地理情報学的理解が不可欠であること, また通院介助を伴った現行の外来診療形態はその介護力の低下故に将来変更を余儀なくされる可能性のあることが示唆された.
ISSN:0468-2513