結核菌のpyrazinamide感受性試験に関する外部精度評価

「要旨」:〔目的〕pyrazinamide (PZA) は主要抗結核薬のひとつであるが, 薬剤感受性試験法が一般の方法と異なり, 偽耐性が多いことが報告されている. 日本国内での同薬剤の試験精度の現状を明らかにするため, PZA感受性試験について外部精度評価を実施した. 〔方法〕薬剤耐性既知の結核菌10株を使用した. 被験薬剤はPZAを主要対象としたが, 同時にisoniazid (INH), rifampicin (RFP), streptomycin (SM), ethambutol (EB), kanamycin (KM) およびlevofloxacin (LVFX) についても評価可能...

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Published in結核 Vol. 92; no. 8; pp. 519 - 527
Main Authors 御手洗聡, 山田博之, 青野昭男, 近松絹代, 五十嵐ゆり子, 村瀬良朗, 阪下健太郎, 大藤貴, 高木明子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核病学会 15.08.2017
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Summary:「要旨」:〔目的〕pyrazinamide (PZA) は主要抗結核薬のひとつであるが, 薬剤感受性試験法が一般の方法と異なり, 偽耐性が多いことが報告されている. 日本国内での同薬剤の試験精度の現状を明らかにするため, PZA感受性試験について外部精度評価を実施した. 〔方法〕薬剤耐性既知の結核菌10株を使用した. 被験薬剤はPZAを主要対象としたが, 同時にisoniazid (INH), rifampicin (RFP), streptomycin (SM), ethambutol (EB), kanamycin (KM) およびlevofloxacin (LVFX) についても評価可能とした. 研究参加各施設の通常の試験方法によって薬剤感受性試験を実施し, 結果を基準判定と比較し, 施設あるいは薬剤ごとの感度, 特異度, 判定一致率, κ指数を算出した. 〔結果〕病院検査室70, 検査センター21, 地方衛生研究所6の計97施設で実施した. 8施設が複数の結果を提出したため, 解析対象数は計105となった. 検体の受領から結果報告までの日数は65.4±20.7 (21~109) 日であった. PZAについては60施設が実施しており, 偽耐性が大変多く認められ, 結果として感度は96.6% (95% CI: 87.4-99.4%) であったが, 特異度が64.3% (95% CI: 50.8-76.0%) となった. 使用キット別では極東PZA液体培地 (極東製薬工業) が44施設で使用され, 特異度69.5% (95% CI:53.6-82.0%) であったのに対して, 16施設でミジットシリーズピラジナミド (ベクトン・ディッキンソン) が使用され, 特異度は48.8% (95% CI:24.5-73.5%) であった (p=0.0043). 〔考察〕現行のPZAの試験特異度はきわめて低いと考えられた. ミジットシリーズピラジナミドについては偽耐性が発生しやすいという論文が既に複数報告されているが, 極東PZA液体培地についても平均70%以下の特異度であった. 液体培地によるPZA感受性試験は結果が比較的早く得られるため, 臨床ではその検査結果を基にPZAの使用が中止される可能性もある. また, 特にM / XDR-TBを治療する際にPZAは重要な薬剤であり, 適切な訓練を通じて検査精度を高める, あるいは代替法 (Line probe assayやpyrazinamidase試験) を採用する必要性が急務と考えられた.
ISSN:0022-9776