大学ラクロス競技における頭部外傷の実態と問題点の検討

〔要旨〕ラクロス競技は, 本邦では大学から始める選手が多い競技である. 我々は, ラクロス競技中に生じた頭部外傷の実態と問題点を明らかにする目的で, 男女選手を対象に過去に生じた競技中の転倒状況や頭部外傷の受傷状況, 頭部外傷の知識についてアンケート調査を行い予防対策について検討を行った. 対象は, 2018年度九州地区ラクロス部に所属する競技者と関係者である. 競技者209名(男性80名, 女性129名), 関係者53名から回答を得た. 転倒経験は, 男性では75名(93.8%), 女性では114名(88.4%)に認めた. 転倒状況は, 男女ともにボールに関わるときに多いが, 女性DFではD...

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Published in日本臨床スポーツ医学会誌 Vol. 30; no. 3; pp. 714 - 723
Main Authors 重森裕, 寺田光輝, 福嶋洋, 大坪俊矢, 後藤恭輔, 舘原宗幸, 安高駿, 鶴崎莉乃, 山口継太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床スポーツ医学会 31.08.2022
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ISSN1346-4159

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Summary:〔要旨〕ラクロス競技は, 本邦では大学から始める選手が多い競技である. 我々は, ラクロス競技中に生じた頭部外傷の実態と問題点を明らかにする目的で, 男女選手を対象に過去に生じた競技中の転倒状況や頭部外傷の受傷状況, 頭部外傷の知識についてアンケート調査を行い予防対策について検討を行った. 対象は, 2018年度九州地区ラクロス部に所属する競技者と関係者である. 競技者209名(男性80名, 女性129名), 関係者53名から回答を得た. 転倒経験は, 男性では75名(93.8%), 女性では114名(88.4%)に認めた. 転倒状況は, 男女ともにボールに関わるときに多いが, 女性DFではDF時の転倒が多い. 転倒方向は, 男性では前方への転倒が多いが, 女性では, 横向きまたは後方への転倒が多い. 頭部外傷は, 男性では38名(47.5%)と, 女性55名(42.6%)より多いが, 脳振盪診断は, 女性が7名(5.4%)と男性1名(1.3%)より多い. 本調査では, 脳振盪発生時に関係者では対応できない可能性がある. 本邦のラクロス競技では, 男性の頭部外傷割合は多いが, 脳振盪発生は女性に多いことが明らかとなった. 原因として, 男女のルールの違いや防具の違いが, 脳振盪発生に関与していると推測される. ラクロス競技を安全に行える様に, 競技者への脳振盪予防教育の啓発に加え, 女性へのヘッドギア装着など重大事故予防のための競技環境を整えていく必要がある.
ISSN:1346-4159