ホスファチジルイノシトール50 (PI 50) の摂取によるラットの記憶・学習能力増強とホスファチジルイノシトールの関係について

「1. はじめに」成長するにつれて神経新生量は減少していくと考えられていたが, 1990年代から2000年代初頭にかけて, 海馬や脳室下帯では実際には大人になってからも神経新生が続くことが確認され, ヒトを含む多くの哺乳類において, 成体でも神経細胞の新生が生じていることが明らかになっている. 先行研究によると海馬での神経新生は, 学習や記憶に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている. また, 黒酢, DHA, EPA等の摂取, 豊富な環境下での飼育や運動等が海馬での神経新生に有効であることも報告されており, 神経細胞の新生は様々な外部の刺激による神経系の活動程度に依存し増減することが...

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Published in脂質栄養学 Vol. 32; no. 1; pp. 12 - 22
Main Authors 申敏哲, 行平崇, 小牧龍二, 福永貴之, 坂本亜里紗, 亀山広喜, 登尾一平, 矢澤一良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脂質栄養学会 31.03.2023
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Summary:「1. はじめに」成長するにつれて神経新生量は減少していくと考えられていたが, 1990年代から2000年代初頭にかけて, 海馬や脳室下帯では実際には大人になってからも神経新生が続くことが確認され, ヒトを含む多くの哺乳類において, 成体でも神経細胞の新生が生じていることが明らかになっている. 先行研究によると海馬での神経新生は, 学習や記憶に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている. また, 黒酢, DHA, EPA等の摂取, 豊富な環境下での飼育や運動等が海馬での神経新生に有効であることも報告されており, 神経細胞の新生は様々な外部の刺激による神経系の活動程度に依存し増減することが確認されている. 脳神経細胞の重要な構成成分であるリン脂質も脳機能改善効果があることが報告されているが, 脳内のリン脂質含有量は加齢とともに減少することが報告されている. リン脂質の一種であるホスファチジルイノシトール (Phosphatidylinositol, PI) は, ヒトをはじめとした真核生物の細胞膜を構成する成分であり, PIにより生産されるイノシトールトリスリン酸 (Inositol trisphosphate, IP3) は, 細胞内のカルシウムストアからのCa2+遊離, 神経成長因子の分泌, 細胞の発生・分化に影響を与えることだけではなく, 記憶や学習, 神経の可塑性などの高次脳機能にも密接な関係があることが確認されている.
ISSN:1343-4594