「食」からはじめる施設入居高齢者の生活支援プログラムの試行 - 単一施設の結果から

「要旨」【目的】「食」を切り口として包括的なケアを進めることで生活全般に波及することをねらい「食からはじめる生活支援プログラム」を作成した. 本研究は, その効果と継続性に関して評価することを目的とし, 1)栄養摂取状態, 2)口腔健康, 3)発熱頻度, 4)意欲・食欲の改善が入居者にみられるかを明らかにした. 【方法】研究協力者は一特別養護老人ホーム入居者(入居者)および入居者のケアに直接かかわる施設スタッフ(介護職, 栄養士, 看護師, 理学療法士等)とした. プログラム内容は, 3カ月間の1)集中プログラム: 入居者各自についての(1)テーラメイド個人プログラムと(2)集団体験学習プログ...

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Published in兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 Vol. 23; pp. 31 - 46
Main Authors 坂下玲子, 高見美保, 森本美智子, 金外淑, 加治秀介, 小野博史, 藤原美保, 濱田三作男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所 01.03.2016
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ISSN1881-6592

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Summary:「要旨」【目的】「食」を切り口として包括的なケアを進めることで生活全般に波及することをねらい「食からはじめる生活支援プログラム」を作成した. 本研究は, その効果と継続性に関して評価することを目的とし, 1)栄養摂取状態, 2)口腔健康, 3)発熱頻度, 4)意欲・食欲の改善が入居者にみられるかを明らかにした. 【方法】研究協力者は一特別養護老人ホーム入居者(入居者)および入居者のケアに直接かかわる施設スタッフ(介護職, 栄養士, 看護師, 理学療法士等)とした. プログラム内容は, 3カ月間の1)集中プログラム: 入居者各自についての(1)テーラメイド個人プログラムと(2)集団体験学習プログラム(入居者対象および施設スタッフ対象を各月1回計3回), 続く3カ月間の2)継続プログラムからなる. 介入の効果と継続性を検討するため, 介入開始前, 介入3カ月後, 介入6カ月後(終了時), 介入終了6カ月後において, 以下の項目を比較した. 1)栄養摂取状態(BMI, 摂取カロリー量, 水分摂取量, 食形態), 2)口腔健康状態(現在歯, 齲歯, 義歯, 処置歯, 歯垢, 舌苔, 舌機能), 3)調査前3カ月の発熱頻度, 4)意欲(Vitality index), 食欲. 4回分の調査記録がある入居者について分析を行った. 本研究は兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所研究倫理委員会の承認をうけ実施した. 【結果・考察】研究協力入居者は100人(男性24人, 女性76人), 平均年齢は83.6歳(60~101歳)であった. 1)栄養状態には有意な変化がみられ, 摂取カロリー(p=0.005), 水分摂取(p=0.000), 食形態(p=0.003)のいずれの項目も介入前と比較し介入6カ月後にかけ改善する傾向にあったが, 介入終了6カ月後には元に戻る傾向にあった. 2)口腔清掃の状況を示す歯垢や舌苔では, 介入前と比較し, 介入3カ月後, 介入6カ月後, 介入終了6カ月後と有意に改善した. 3)発熱の頻度は有意な変化がみられ(p=0.019), 介入前と比較して介入3カ月後は有意に低下した. 4)食欲は有意な変化がみられ(p=0.000), 介入前と比較し, 介入3カ月後, 介入6カ月後は有意に増進したが, 介入終了6カ月後には減少した. Vitality Indexは有意な変化がみられ(p=0.000), 介入前と比較し, 介入3カ月後は有意に増加したが, 介入終了6カ月後には減少した. 【結論】本プログラムは, 栄養状態, 口腔健康, 発熱頻度, 意欲や食欲の向上に効果があると考えられたが, 介入終了後その効果は続かず, 継続的に介入を行っていく必要性が示唆された.
ISSN:1881-6592